連続小説
『ザ・グレイトバトルCROSS 〜鋼の勇者達〜』
第1話『来訪者、彼方より・・・』


私達の住むこの世界の向こうには、こことは全く別の世界が存在すると言われている。
俗に言う『平行世界』『パラレルワールド』と呼ばれる世界である。
もしもあの時こうしていれば。
仮に別の道を進んでいたら。
そうした「もしも」の可能性の数だけ、平行世界は無限に存在するのである。

だが限りなく近い場所にあるはずの世界同士は、見えざる強大な壁に阻まれ、決して交わる事はない。
まるで何者かが世界の交わりを否定するかのように。
この物語は、その決して交わる事のない世界が一時的に交わった事によって起こった、世界の壁を越える熱き友情の物語である・・・・・


正義のヒーロー達と悪のライバル達が暮らす夢の世界、コンパチワールド。
環境維持装置によってバランスを守られたこの世界は、今日も平穏な一日を終えようとしていた。
「隊長、午後の巡回パトロール、無事に終了しました」
「本日も何事もなく終わりましたよ。コンパチワールドは今日も平々凡々です」
ここはコンパチワールドの中心部に建てられた警察本部『S.D.P(スペシャルディフェンショナルポリス)ベース』。
警察機構所属のヒーロー達は、ここを拠点として日夜コンパチワールドの治安維持に努めているのだ。
本日のパトロール担当である宇宙刑事シャリバンとシャイダーは、オフィスに帰還し上司であるギャバンに報告を終えた。
「二人ともご苦労。今日はもう上がっていいぞ」
「「了解です」」
「お疲れ様シャイダー、これ用意しておいたけど、飲む?」
ギャバンの後方から歩いてきた宇宙刑事アニーは、パートナーのシャイダーにドリンクを手渡した。
「ありがとうアニー、ありがたく頂くよ」
「お疲れ様ですシャイダー先輩、今日もパトロール大変でしたね」
「いやぁ、正直ここ最近事件らしい事件もないから、暇を持て余しているのが現状だけどね」
ディスクワーク関連の仕事を片付けていた仮面ライダーG3−Xに言われ、シャイダーは苦笑しながら答えた。
「確かに、最近の一番新しい事件といえば湖でおぼれていたピグモンとカネゴンをG3マイルドが救出しようとして、逆におぼれかけて
ジバンとジャンパーソンに救助された一件くらいですからねぇ」
「せ、先輩〜〜、それはもう言わないでくださいよ〜〜〜(汗)」
「ハハハ、悪い悪い」
涙目でG3マイルドが懇願し、シャリバンが笑いながら謝る。
「しかし先輩達の言うことももっともですね。環境維持装置のおかげで平和を保てている現在では、我々も開店休業状態をせざるを
得ませんからね」
それまで話を聞いていたデカレンジャーロボがギャバン達に向き直って意見を述べた。
「確かにそうだな。だがかつてのダークブレインによる一連の事件、そして近年起きたむらまさマルによる『CAOS事件』のような例も
ある。例え事件がなくとも我々の力が必要となる時は必ずやって来るはずだ。お前達もそれを忘れぬよう肝に銘じておけ」
『了解です!』
ギャバンの発言にシャリバン達は綺麗に揃った敬礼で返す。
と、その時である。
「ギャバン先輩!」
デカバイクロボが息を切らせ、やや急ぎ足でオフィスに戻ってきた。
「どうした?お前は今日は非番のはずだろう」
「大変です、外を見てください!」
「外だと?」
デカバイクロボに言われ、ギャバン達はオフィス内の窓を開けて外の様子を覗いた。

「こ、これは!?」
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ・・・・
彼らの視界に移ったのは、衝撃的な光景であった。
コンパチワールドの空の一部に、まるでブラックホールのように渦巻くドス黒い色の大穴が開いていたのである。
穴の外側では周期的に稲妻が巻き起こり、雷雲を思わせる雰囲気もあった。
「あれは一体何なんだ?」
「わかりません、僕が外を歩いていたら急にあの穴が空に開いて・・・」
「隊長、これは・・・」
「わかっている、至急偵察部隊を送って調べさせよう。お前達は万一に備えて市街地内で待機・住民の安全を確保してくれ」
『了解!』
敬礼と共に、シャリバン達は一斉にオフィスの外へと出動していった。

「これがその大穴か・・・確かにデカイな」
「ええ、何が起こるか分かりませんから気をつけてくださいね」
「分かっている、俺たちの任務はあくまで一時的偵察だからな」
大穴周辺の上空では、デカウイングロボと飛行可能な万能パトカー・ジョーカーに乗ったロボット刑事Kが大穴の様子をうかがっていた。
「こちらデカウイングロボ、現在謎の大穴の周辺に到着、現在待機中。そちらの様子はどうだ?」
『こちらシャリバン、市街地では一部で住民がパニックを起こしているが、野次馬が集まる程度で目立った混乱はない。引き続き偵察を頼む』
「了解」
無線連絡を切り、デカウイングロボは再び大穴に向き直った。
「しかしこの調子だと、まるで中から何かが出てきそうな感じだな。ゾーリムとかアンノウンハンドとか」
「縁起でもない事を言わないでくださいよ。本当にそんなのが出てきたら僕達なんひとたまりもありませんよ?」
「わーってるって、冗談だ冗談。真に受けるなって」
そんな会話を二人が交わしていた時である。
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ・・・・・・・
バリバリバリィッ!!
穴の周囲で起こっていた稲妻が激しさを増し、その一部が二人のいる方向にも飛び散り始めた。
「うおおっ、あ、危ねぇ!」
「これ以上ここにいたら危険です、地上に降りましょう!」
「・・・仕方がねぇ、降下だ!」
二人はやむなく降下し、地上から偵察を続ける事にした。
その間にも稲妻は激しさを増してくる。
「こりゃ本格的にやばいな・・・・周囲に民間人は?」
「調べてみましたが反応はありません。ただこのままだと稲妻が市街地まで飛び散る恐れがあります」
「シャリバン先輩達への連絡は?」
「既に済ませています。現在住民達の避難誘導を開始したようです」
「そうか。ならひとまずは安心だな」
それを聞いてデカウイングロボは安堵の声を上げた。
「!!待ってください、あの穴の内部から強大なエネルギー反応をキャッチしました!」
「何!?」
振り返ってみると大穴の内部が異常に歪み始め、今にも中から何かが現れそうな状態となっていた。
ジョーカーに搭載された計器も振り切れんばかりの勢いでエネルギーを計測し続けている。
「エネルギー増大率なおも上昇中!200・・・300・・・駄目です、計測不能!」
「・・・K、お前はすぐに退避しろ!」
「何をする気です?」
「もしもあの穴から何かしらのヤバイ物が出てきたなら、俺のデカウイングキャノンで吹っ飛ばす!」
「無茶です!いくらあなたのキャノンでもこのエネルギー量に対抗する事は・・・」
「お前はすぐにこの事を皆に報告するんだ!犠牲は俺一人でいい!!」
「しかし!」
「行けぇッ!!!」
デカウイングロボの怒声が周囲に響く。
「・・・・・・・・・・幸運を祈ります!!」
必死で涙をこらえつつ、Kはジョーカーに乗り込み市街地へと全速力で向かっていった。

「・・・任せとけ、俺はそう簡単にくたばりはしねぇ」
デカウイングロボはデカウイングキャノンへと瞬時に変形を終え、大穴の内部へと狙いを定めた。
「ターゲット・ロックオン、さぁ、矢でも鉄砲でも持ってきやがれ!!」
そしてその数秒後。
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ・・・・・
キュィィィィィィィィィィィィィィィィン!!
大穴の歪みが激しさをさらに増し、その奥深くから何かが接近してくるのが肉眼でも確認できた。
「来たか!」
デカウイングロボもそれに合わせて再び狙いをつける。
だが、彼の目がふと何かを察知した。
「!!(一つじゃないのか?)」
見ると大穴から迫る影は、確認できるだけでも3つ以上は存在していたのである。
「ここまで来て退けるかよ!3つだろうが4つだろうがまとめて相手してやるぜ!」
影の一つに狙いを定め、彼は今まさに引き金を引こうとしていた。
しかし、それは実行される事はなかった。

『(駄目)』
「!?」
『(あれを撃ってはいけない)』
「だ、誰だ?」
突如としてデカウイングロボの頭の中に少女らしき声が響いたのである。
『(お願い・・・彼らと共に・・・この世界を・・・救って・・・)』
「彼ら!?この世界を救う!?」
謎の声に戸惑い、デカウイングロボは引き金を引く事を一瞬忘れてしまう。
『(共に戦って・・・彼らと・・・鋼の・・・勇者達と・・・・・・・)』
「鋼の・・・勇者?』
だがそこで少女の声は途切れてしまう。
「今のは一体・・・・・」
呆然とするデカウイングロボだが、その一瞬の間に事態は急変していた。
ビュゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥン!!
「なっ!!」
大穴の内部からいくつもの影が高速で飛び出し、周囲のあらゆる方向へとバラバラに散っていったのである。
そのうちの二つは巨大なフォルムを持ち、残る二つは等身大の大きさをしているのが分かる。
「しまった・・・撃ち損じたか!」
シュィィィィィィィィィィン・・・・
「穴が!」
そして当の大穴はいくつもの影を吐き出したと同時に徐々に収縮し、最後には何もなかったかのように完全に消滅してしまったのである。
「(・・・・あの穴と影は一体何だったんだ・・・それにあの少女の声は・・・)」
キャノン形態から変形完了し、デカウイングロボはそのまましばらくその場に立ち尽くしていた。

その後、デカウイングロボとKが持ち帰った情報は整理され、翌日再び捜査が行われる事となった。
情報収集班の調査で巨大な二つの影は一方は遠く離れた海中へと没した事が判明したが、もう一方の影と小さな二つの影については詳細はどういう訳か分からずじまいであった。
そしてこの事件はすぐにマスコミによって報道されたが、ギャバン達が情報公開を控えた事もあり、詳しい情報は人々には伝えられぬまま終わったという。
住民達が不安を抱える中、コンパチワールドはその一日をひとまず終えたのだった。


草木も眠る丑三つ時。
コンパチワールドのとある山中に、一人の人影があった。
その人物は黒一色の漆黒の装甲をしたロボットだったが、ガンダムやザクのようなモビルスーツとはまた違う特異な姿をしていた。
「彼」はその両腕には二門のハンドガンを装備しており、背中からはまるで動物の尾のような物を生やしていたのである。
だがその身体は所々に深い傷を負っており、歩くのもやっとという状態が目に見えて分かる。
その「彼」を襲うべく、木々の間から姿を覗かせる影がいくつも見られた。
近寄ってきた生物の血液を吸う怪奇植物スフランである。
格好の獲物を見つけたスフラン達は我先にと「彼」に触手を伸ばし、その餌食にしようとしていた。
だが、それは叶わぬ願いである事がすぐに判明した。
「邪魔だ」
バチィィン!
「彼」の周りに見えないバリアのような壁が展開され、スフラン達の触手を弾き始めたのである。
危険を察知したスフラン達は蜘蛛の子を散らすようにその場から退避していく。
「(・・・ここは一体何処だ・・・一刻も早く奴らを探し出さなければならないというのに・・・)」
「彼」は苦虫を噛み潰したような表情で歩みを進めていく。
「(・・・・・生命反応有り、さっきの植物とは違う・・・)」
何者かの気配を感じた「彼」は、その方向へと振り返る。
「何者だ」
「・・・他人に名を問う時はまずそちらから名乗るのが礼儀ではないか?」
「彼」に声をかけられた人物はそう言い返した。
男の名はガンダムシュピーゲル。ガンダム族の一人である忍者ファイターである。
「・・・『漆黒の王子』とでも呼ぶがいい。俺は既にかつての名は捨てた身だ」
「私はガンダムシュピーゲル。貴殿は見かけぬ顔だが、見た所モビルスーツ族の新入りか?」
「そんな種族の名は知らん。それより貴様に問う、ここは何処だ?」
「ここはコンパチワールドに居並ぶ山が一つ『ギアナ山』。私は現在この場所で修行中の身だ」
「コンパチワールド・・・・そうか、やはり俺は・・・」
彼こと『漆黒の王子』はうつむき、予感的中といった表情で再びシュピーゲルに向き直った。
「うむ・・・貴殿はどうやら訳ありのようだな。それにその傷も深い、その身体でこれ以上山中を歩き回るのは危険だ。
私の隠れ家まで案内しよう、今日のところはそこに止まると良い」
「要らぬ世話だ、俺にはなすべき事がある。奴らを・・・この世界に来ているであろう奴らを探し出さねば・・・」
シュピーゲルの差し伸べた手を振り払い、『漆黒の王子』は再び山の奥へと歩き始めた。
だが、その行く手をシュピーゲルが遮った。
「そこをどけ。俺の邪魔をするなら容赦はしない」
「いや、何と言おうと邪魔させてもらおう」
二人は瞬時に距離を取り、それぞれがシュピーゲルブレードとハンドガンを手に取り臨戦態勢に入った。
「(できる・・・この男、隙がない。相当の手錬れと見える!)」
「(この身体では長期戦は保たん・・・一気にケリをつける!)」
そのまま数秒の時が過ぎた、その刹那。
「せいやぁっ!」
「ぬんっ!」
ガキィィィィン!!
シュピーゲルブレードが『漆黒の王子』の右腕を切り裂こうと振るわれたが、彼の周囲に起こった壁がその刃を弾き返す。
「バリアか、ならば!」
シュピーゲルは両腕にブレードを構え、そのままコマのように高速回転を始めた。
「シュトゥルム、ウント、ドランクゥゥゥゥゥゥゥ!!」
高速回転する刃は『漆黒の王子』の身体を確実に捕らえ、今まさにバリアごと切断されようとしていた。
「・・・ジャンプ」
ブゥゥゥゥンン・・・
だがその瞬間『漆黒の王子』の身体が霧のようにその場から消え去った。
「(消えた?いや、これはワープの類!)」
シュピーゲルはそのまま回転を止めず、反対方向へとその刃を振るった。
そしてその先には、消えた『漆黒の王子』の姿が再び現れた。
「(馬鹿な!ボソンジャンプの移動先を読んだだと?)」
「許せ!」
ズバァァァァァァァッ!
「がっ!?」
ドサッ・・・
驚くと同時にその刃を食らい、『漆黒の王子』は力尽きてその場に倒れ伏した。
「安心めされい、峰打ちだ。すまぬがこのまま連れて行くぞ」
シュピーゲルは彼を抱え、自らの住居へと足を進めた。
「(この男の目・・・何か憎しみに囚われた目をしている・・・そう、激しい憎悪の色を・・・)」
気絶した彼の顔を覗き込み、シュピーゲルは改めてそう感じたという・・・


<次回予告>
突如としてコンパチワールドに現れた謎の男。
それと時を同じくして現れた正体不明の謎の存在。
戸惑うヒーローとライバル達の前に、あの戦士が姿を現す!
次回「スーパーロボット大戦CROSS」第2話『飛びたて!大空魔竜』!!
次回もこの小説に、ファイナルフュージョン承認!

<あとがきのようなもの>
どうも、新作を引っさげてまいりました恐竜戦車弐式です。
なんか今回も勢いで始めてしまいましたが、なんとか完結には持っていこうと思っている次第です。
登場するキャラクターに偏りは出ると思いますが、その辺は私の知識不足という事で勘弁してください(汗)
というわけで、今回もよろしくお願いしますね。



恐竜戦車弐式さん新作ありがとうございます。
うわっ!?うちのCAOSが書いてるよ(喜)
『S.D.P』『ギアナ山』などヒーローに対して愛着を感じられ楽しく読まさせてもらいました。
読んだその日に『漆黒の王子』が登場するビデオを借りてくるぐらいの面白さです。
ちょっとお節介ですが、次からは文面をメールにコピペしてから送るといいかもしれません。

え〜最後にお約束の一言
 これが勝利の鍵だっ! 大空魔竜(で良いですよね)