20××年。

日本は大きな変化を迎えていた。
数年前から現れだした巨大生物、怪獣。そして、宇宙から友好
あるいは侵略に来た宇宙人の来訪。顕著になりつつあるテロ活
動。その影に暗躍する秘密結社。そして、ほかならぬ人間同士
の争い・・・。
日本の首脳は、警察、自衛隊、海上保安庁、入国管理官など、
日本の治安を保持する組織を各省庁から抜粋、一本化し国防省
を設立する。そして現在、国防省の中に怪獣や怪人を専門に相
手する組織『特別戦闘隊』を設立するにいたる。

パパパパ……!!

迷彩服に身を包んだ特戦隊隊員は、手にした小銃を乱射する。
太陽のぎらつく昼間のオフィス街にはおよそ似つかわしくない
。が、彼はそんなことを気にする余裕は無いようだ。

「ちくしょう!!どうなってるんだ!!」

引き金を絞りつつも、彼は戸惑っていた。特戦隊は最低でも小
隊規模での作戦行動を原則とした組織である。にもかかわらず
、彼のほかにそれらしい人影は見当たらない。

「ちっくしょう!!」

パパパ……!!…キン!

長く続いていた銃声が鳴り止む。

「まじかよ!弾切れ…?」

もう予備の弾丸は無い。先ほどまで、彼の一縷の望みであった
小銃も、もはや鉄くずも等しい。
屈強な体躯が震えている。大の男にふさわしくない涙が流れて
いる。

「ちくしょう……。」

コキッっと、首を鳴らすように首をかしげながら、それは近づ
いてきていた。先ほどまで銃弾の雨を浴びていたにもかかわら
ず、苦しそうなそぶりも無い。ただ、手だけは真っ赤だった。

「つまんねぇな。これが、特戦隊って奴か。」

その声の主はは、彼に向かって、何かを投げつけた。
それは赤くなった迷彩服。首が無いだけの特戦隊の隊員。隊員
達の死体だった。

「ふぅうう……。」

それは、ため息のような息をはくと、一瞬にして彼との距離を
ゼロにした。
そして、耳元でつぶやく。

「ぬるいな…。」

ズビシャッッ!!
またひとつ、真っ赤な花が咲いた。



その様子は上空500メートルから、特戦隊作戦室に映像伝送さ
れていた。

「なんたることだ…!」

五十嵐総理大臣は青くなっていた。

「第二小隊は全滅です。」

震える声でアナウンスが流れた。

「てんで、あいてにならないだと?特戦隊の武装では歯がたた
んだと!?」

所々で、えらそげな人間たちが、言葉を漏らす。「隊員が弱い
」だの「予算の無駄遣い」だの様々だが、打開案のようなもの
は一つとしてあげられなかった。

「総理。」

渋めの声が作戦室に響いた。

「試作段階のアレを使います。許可を。」

「アレ?…まさか、PSか?」

「そうです。JPS-G3。あれを起動します。」

「むぅ…。G3か。正木司令、大丈夫なのか?」

「…そのための特戦隊です。」

正木と呼ばれた男は、立ち上がり総理一同に背をむせ歩みはじ
めた。

カシュッ!

自動ドアが近代的な音を立てて開く。革手袋をキュッとはめる
と、特戦隊、最高司令正木俊介はG3ユニットへとすすんだ。

「小沢大佐!」

「はい!」

ドアの奥には、瞳の大きな美女が号令をいまや遅しと待ってい
た。

「氷川中尉は出れるか?」

「もちろんです。」

美女が答える。

「では、いよいよG3システムの出番ということですね?」

続けて若干、滑舌の悪い細身の大男が続けた。

「そうだ…。ついに、我々は切り札を使う特が来た。氷川中尉
!G3システムで、出撃用意!」

正木が号令を出すや否や、特戦隊の基地から、一台のトレーラ
ーが飛び出した。
小沢や氷川(あと、尾室)をのせたGトレーラーが出撃したの
だった。

車内にて。
緊張の面持ちの氷川と尾室。何しろ、まだ試験段階の兵器を実
践で使うのだ。不安も致し方ないものがあった。
そんな二人に、G3システムの設計し、実際に試験的に運用し
ている責任者、小沢澄子が一喝した。

「そんな弱気でどうするの?相手が未知の怪人でも宇宙人でも
G3システムなら勝てる。そうでしょ?氷川君!」

口を一文字に結んで、力強い視線を氷川誠に送る。

「…えぇ!そうですね!」

うつむいたまま、口を一文字に縛り氷川誠は応えた。
やがて、Gトレーラーは第二小隊が全滅した位置へつく。トレ
ーラーから巨大なアンテナを出し、基地の作戦室へ通信をつな
ぐ。

「正木司令、到着しました。」

小沢がマイク越しに作戦室に話しかける。

『了解。作戦行動を開始せよ。』

「了解。作戦行動に移ります。……さて、氷川君、行くわよ。


JPS−G3。それは、一種のパワードスーツであった。全身
を鎧のようなアーマーで囲い、防御はもちろん、筋肉の動きに
あわせてアーマー内部のモーターが回転。結果として、通常の3
倍以上の身体機能を発揮することができる。さらに、頭部のヘ
ルメットには、Gトレーラーとの通信、および各種センサーが
設けられていた。
氷川はG3のアーマーを装着する。構造上一人で全てを装着で
きないようになっているので、手の届かないところは尾室が手
伝っていた。

シュン

メットの後部が自動的に氷川の頭にフィットする。

「G3システム。装着完了!」

「目標確認。G3システム出撃用意!」

モニターに異形の怪人が写る。人の体にクモのようなマスクを
かぶっている。瓦礫に腰を下ろし、うなだれている。

「G3システム!出撃します!」

Gトレーラーから愛用の白バイ、ガードチェイサーにまたがっ
たまま放たれる。
そのまま氷川はガードチェイサーのアクセルを全開にし、目標
の位置まで走り出す。

「ん?なんかきやがったな。」

怪人は、重たげな腰を上げ、G3の方を見た。

「へへっ。」

そして、深めに腰を落とし、G3を迎撃する姿勢をとった。
ブウウゥウゥ……ン!!
ガードチェイサーは速度を増し、怪人に突っ込む。その速度は
時速300キロに達しようとしていた。
時速300キロの物体の衝撃。物理的に考えて、普通の生物には
耐えられるものではないだろう。
ドガッ!!
…意外と地味な音だ…。氷川はそう思った。怪人の体が崩れる
音にしては…と。

「へへっ。楽しませてくれよぉ?」

そして驚愕した。
怪人はバイクのカウルをわしづかみにして、衝突を食い止めて
いたのである。

「化け物めっ!」

とっさに氷川はガードチェイサーから飛びおりった。
そして、怪人に殴りかかる。
今なら両手がふさがっている。まともに殴れば、きくはずだ。
ガン!ガン!
手ごたえはある。なにせ、G3がまともに殴れば、10センチの
鉄板もへこますことは容易だ。
なのに怪人は、対したりアクションも無くゆっくりとガードチ
ェイサーを投げ捨てた。そしてゆったりと、こめかみに一撃だ
けG3にかえした。
ガキョン!!
氷川はゆうに3メートルは吹き飛ばされたろう。首が折れてい
ないほうがおかしかった。

「し、視覚センサー大破…。G3システム、戦闘不能です。」

Gトレーラー内の尾室隆弘は、モニターしながら絶望的な報告
を上官に上げた。

「…氷川君、撤退しなさい…。」

小沢の弱々しい声はスピーカーを介し氷川に聞こえたはずだ。

『…まだです。小沢さん。』

だが、画面越しにはゆっくり立ち上がるG3、そしてあきらめ
の悪い声が見て取れた。
G3の頭部は一部崩れ、氷川の頭が覗いていた。

「そうだ。もっと、楽しませてくれよ?」

怪人はそんなG3がいたく気に入った様子で、楽しそうな声を
上げる。

「氷川君…撤退しなさい。」

怪人は、牛のように足で土を巻き上げ突進してくる。

「氷川君!撤退しなさい!!」

小沢の声が厳しくなっていく。

ドガッ!!

宙を舞うG3。
ガシャッ
一部、装甲が弾け飛ぶ。

「ヘヘッ。この蜘蛛男様の敵じゃねーな。」

怪人の気味の悪い声が響く。

「氷川君!!!」

それでも、G3は立ち上がる。

「氷川君、撤退しなさい!命令よ!!」

無事であった安堵感と、またいつ危機が訪れるとも知れない焦
燥感から小沢の声はきつくなる。

『平気です。…やれます。』

氷川は退かない。決意のまなざしで怪人と対峙する。

『やって見せます!このG3の力を見せてやります。』

G3はふらふらと構えを取る。

『かかって来い…!!』

蜘蛛男からすれば、【殺してくれ】と聞こえたかもしれない。
にたりと顔をゆがませ、首を鳴らす。
そして、距離を詰める。

「しね。」

怪人の右手が鋭く振り下ろされる。
誰もが目を覆った瞬間の出来事だった。
ブシュウウッ!!!
GS−03…太ももに装着されているG3専用の高振動ブレー
ドユニット…が、蜘蛛男(と、名乗っていた怪人)の胸に突き
刺さる。
もちろん、蜘蛛男の右手はG3の左肩から胸に向けて深く食い
込んでいた。
しかし、G3の装甲を引き裂く爪の勢いは次第に弱くなってい
く。

「ぐぅっ!!」

ズズズズ……
今もなお、GS−03は微振動しながら、蜘蛛男の肉体を引き
裂き続ける。並みの鉄板ならやすやすと切り裂くナイフなのだ
が、どうやら、並みの鉄板とは比べ物にならないくらい怪人の
体は引き裂きにくいものらしい。あるいは、生物特有の筋肉繊
維がナイフの切れ味を落としているのだろうか。

「終わりだ…。怪人ッッ!!」

ぶしゅうううううううう
遂には、G3のナイフは怪人の体を切り裂き、緑色の粘着質な
液体を撒き散らす。怪人の体は、大きくのけぞり後ろに数歩下
がったと思うと、音を立てて地に伏した。

『氷川君!良くやったわ!帰還しなさい。』

小沢の歓喜の声も氷川に届いて異な様子だった。

「はぁ…。はぁ…。」

呆然と立ち尽くしたまま揺らめいている。

がしゃっ

そして、くずおれた。
力が抜け、膝立ちになり、前のめりに倒れこんだ。
そのときだった。
血に伏していた蜘蛛男の体が爆発したのだ。

ドオオオォォンン!!!

『氷川君!!』

Gトレーラーから、小沢と尾室が駆けおりる。
あたり一面は火の海だ。仮に氷川が無事であろうと、この炎に
巻き込まれては全ては水泡に帰す。

「氷川君!!」

だが、火の海に阻まれて、小沢も尾室も氷川に近づくことはお
ろか目視することもかなわない。

「氷川さん!!」

二人の声はむなしく炎にかき消されていった。

ゆらり…。炎が揺らぐ。人影が映っている。

「氷川くん?」

ざしゃっ

炎の中から、少しだけ焦げたメタリックブルーの輝きが姿を現
した。

「…小沢大佐。作戦終了です。」

G3が小沢に敬礼した。



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こんな感じで申し訳ないです。

五十嵐総理は中尾アキラ(釈ゴジの総理は彼)
正木司令は仮面ライダーV3の宮内洋(ウインスペクタ−) 
アギトメンバーはそのまま
というCASTをイメージしてもらえれば幸いです。





なかなか読み応えのある小説ありがとうございます!
グロ表現ありと言ってましたがこれくらいなら許容範囲内です、
というより特撮系って文章にするとグロ表現が多いのを再確認させられました。
G3メンバーはアギトの中で好きな人達でそれぞれの活躍が
テレビ画面のアングルさながらの脳内想像しました!
次回を楽しみに待ってます!