G−3が蜘蛛男を撃破して早2ヶ月。確実に魔手は日本に伸びて
いた。
蜘蛛男を皮切りに、次々と日本に現れた怪人たち。が、特戦隊
の活躍によりその成果は芳しくは無かった。
その失敗を聞くたびに不機嫌に机を蹴り上げる男がいた。
その男は、多くの屍を連ねた悪趣味な椅子に腰掛け、小太りで
丸めがねだった。
その男は面倒くさげに唇をまくった。

「日本侵攻作戦は順調なのか?」

カーキ色の作業服のクセにやけに偉そうな男…日本に程近い独
裁国家・アリコ人民共和国の独裁者、銀夜悪(ギュン・ヨアッ
ク)…は、椅子の背もたれに全体重を預けて続けた。

「遅い。遅いぞ。もっとさっさとやれ。日本だか三本だか知ら
ないが、金だけの国に手間取るな!」

その足元にひれ伏す数人の男たちの頭につばを吐きかける。

「3ヶ月だ。それ以上は無いぞ。わかったか!?地獄大使とや
ら!」

ひれ伏す男は、つばも気にせずに応えた。

「承知しております。」


日本。特戦隊本部。G−3ユニット。
カシュッ

「氷川中尉、出撃用意だ。」

正木司令をみやる尾室隆弘はうんざりした様子だった。

「…また怪人ですか。」

尾室がつい口にしてしまう。階級から言えば、尾室は少尉なの
に対し正木は大将である。明らかに暴言であった。

「あぁ。」

だが、正木は気にした様子は無い。淡々と作戦内容を説明する


「司令。」

話の腰を折ったのはG−3ユニットの長、小沢だった。

「司令。いくらなんでも、出撃回数が多すぎます。G−3の改修
もままならない現状。このまま出撃すれば、氷川中尉の安全は
確保できません。」

小沢はなおも熱弁を振るう。

「大体、特戦隊に対怪人組織はたくさん有るはずです。にもか
かわらず、G−3ユニットに負担がかかりすぎです。新規プロジ
ェクトの立ち上げ、かつ、いままでの成果を統合し情報の共有
化を図らなければ今後の作戦活動は困窮の一途をたどることで
しょう!」

「わかっている!」

小沢の熱弁は、正木の冷徹なまでの一喝によって両断された。
しばしの沈黙の中、正木の視線は小沢に突き刺さる。まるで、
刃のようにとがったそれは、小沢を黙らせるのには十分すぎた


「どのプロジェクトも奮闘してはいる。ウインスペクターしか
り、ソルブレインしかり、エクシードラフトしかり…だ!だが
、特戦隊の一般装備では奴ら怪人に歯が立たないのも事実。対
怪人組織がいかに奮闘しようと、その特殊性故に数が少ない。
そのため君達には無理を承知で強いている。」

「…だったら!」

「わかっている!だが、時間が無いんだ。小沢大佐の提案するG
−3マイルドの量産計画やエクシードラフトの本格量産も、今
しばらくの時間を要する…。わかってくれ。」

正木の嘆願に応えるように、さっきまで何一つとして口を開か
なかったG−3の装着員、氷川誠は力強く言った。

「わかっています。大丈夫、この国を守りきって見せます。」

…と。


都内某所。怪人が二体確認されていた。一体はサンショウウオ
のような爬虫類系の顔をした火を噴く怪人。一体はカミキリム
シのような風貌のしびれガスを吐く怪人。この二体が暴れ周り
、都市近辺に被害を出していた。
そこへガードチェイサーがうなりをあげてやってくる。

「とうっ!」

G−3はガードチェイサーから飛び降り、怪人を確認するなりGX
−05(G−3専用のガトリングガン)をはずす。

「ふっ!」

火を噴くGX−05。次々とはじき出される薬きょうが、ころころ
と転がり終えるころにはGX−05は全ての弾丸を吐き出し終えて
いた。
立ち上る土ぼこりの中、二体の怪人は何事も無いように立って
いた。

「…特戦隊か…。」

サンショウウオの方は空を見やり、けだるげにG−3の方に向き
直る。

「死ね。」

突如、サンショウウオの口から炎が吐きさだれる。
ゴオオオ
炎の渦に包まれるG−3。

「うわあああ!」

炎の中でもだえるも、抜け出すことはかなわないらしい。

「ザンジオー。やりすぎだろ?」

「そういうなカミキリキッド。圧倒的な力を見せつけ、日本か
ら抵抗する意思を取り除け…それが地獄大使様からの命令だ。


「そうだったな。」

炎に背を向け、街へ消えていく怪人達。

「ぬおおおお!」

そんな怪人の行く手を阻んだのは、G−3マイルド、尾室隆弘だ
った。
勢い良く振り下ろされる拳。

「おっと。」

ザンジオーは大げさによろめき、かわす。

「ははっ。雑魚相手は俺かよ。」

カミキリキッドが右手のカマでG−3マイルドを両断。

「うわっ!」

火花を上げるG−3マイルド。大きくたたらを踏み、後退する。

「弱いな!」

左手のカマで胴なぎにもう一閃。
音も無く、G−3マイルドは崩れ落ちる。

『氷川君!尾室君!』

どしゃ
倒れ伏した二人の耳元には小沢の悲痛な叫びがこだました。

「ハーハッハッハッハ!!」

今度こそ行く手を阻むものは無く、二体の怪人は町へ姿を消し
た。



「ここは…。」

氷川は自分が知らないところで寝ているのに気がついた。白い
天井。並んだベット。隣には尾室が寝ている。酸素吸入のマス
クをつけ、幾多のチューブを体に差しながら尾室は眠っていた


「そうか…。」

負けた。それも完膚なきまでに。多分、自分も隣の尾室と同じ
ような姿で寝かされているんだろうと確信した。体が動かない
…。全身に走る激痛。思えばここ2ヶ月、ろくに体を休めたこ
とは無かった。来る日も来る日も怪人と戦い、傷ついてきた。
こんな形でようやくの休暇を手にするとは全くの皮肉だ。しか
し、良く命があったものだ。てっきり自分は…。
コンコン
ノックが響いた。

「ノックなんかしたって、どうせ起きてないでしょうけど…。


沈んだ表情で現れたのは上司の小沢だった。

「小沢さん?」

氷川はそういったつもりだが、酸素吸入のマスク越しではろく
に聞き取れなかったらしい。なにかうめき声と取れたようで、
小沢は慌てて氷川に駆け寄った。

「氷川君?大丈夫?」

「小沢さん…。街は無事ですか…?」

案外、平気そうな氷川を見て、胸をなでおろすと、険しい顔で
小沢は応えた。

「…怪人は依然健在。陸上自衛隊が街への損害も省みず火器で
応戦したけど…。」

「…そうですか。」

沈んだ氷川を励ますためか、小沢はわざとらしいまでの笑顔で
言う。

「ホント、心配したんだから。三日も眠ってたのよ?」

「三日…。そんなに…。」

「…暫く休んでいて?新しいG−3が完成するわ。そうしたら…
もう。」

泣き出しそうに声を振るわせる小沢。遂に最後の言葉を紡ぎだ
すことは叶わず、代わりに涙が落ちた。

「小沢さん…。今、日本を救えるのは小沢さんだけです。頑張
って下さい。」

珍しく氷川が小沢を励ました。
そんな感動のシーンを御室は隣でばつわるさげに眺めていた。

「…僕もがんばったんだけどなぁ…。」


ドガガガガガ!!
火を噴く機関銃。無反動砲。
キュラキュラ…
幾台もの戦車が並び、その砲塔を掲げる。
その照準が合わされているのは、2メートルは決してないいた
って普通の背格好をした二体の怪人であった。
爆炎。業炎。
立ち上る土ぼこり、そして炎の中二体の怪人は悠々と行進を続
ける。

「おいおい。花火は人に向けちゃいけないんだぜ?」

「ケケッ。全く色気のねえ花火だ。」

燃え盛る街。総理の英断で都市部で大規模戦闘を行った陸上自
衛隊であったが、1個師団がほぼ壊滅状態に追いやられていた

日本の未来を守るべく、心身を鍛えてきた若者たちを怪人は吐
く炎、痺れガス…いや、拳や蹴りで粉砕してきた。
文字通りの粉砕である。頭蓋も脊髄も四肢も粉々に散っていっ
た。
辺りは自衛隊員の血と自衛隊の装備の燃える炎とで、真っ赤に
照らされ染まっていた。

「ふぅ。楽勝ってのも、考え物だな。」

怪人はつまらなげに歩く。

「くそう。これ以上怪人の進行を止める術はないのか?」

ごちるのは、今年、定年を迎えるはずだった陸上自衛隊員だっ
た。
モニターの有る天幕の中で顔中に刻まれたしわをより深くし、
顔をゆがめた。

「あるわ。」

その男の後ろで声がした。

「…深見大佐?」

女性だった。こんな非常時にもかかわらず、戦闘服ではなく陸
上自衛隊の制服を着込んだ女性。
自衛隊員であることは違いなさそうだが、こんな時まで制服と
は恐れ入る。幹部隊員の傲慢振りがうかがえた。

「G4。アレを出すしかないわね。水城中尉。準備を。」

天幕の隅で、うなだれていた男はゆっくりと立ち上がった。浅
黒い顔でいかにも自衛隊らしいごつい体つき。唯一の不釣合い
はドレッドヘアだけであろうか。その男の唇がわずかに動く。

「了解。」

短くそれだけを告げた。


シュルルウ…
突如、二体の怪人に小型ミサイルの雨が降った。
ガウーン!
立ち上る黒煙の中二体の怪人は怪訝そうな顔つき…といっても
、それは本人の話でわまりの人間には変化が見分けられないの
だが…で、唇をめくった。

「クホッ!ミサイルまで飛んでくるたぁ、手段を選ばねえじゃ
ねえか。」

「もっとも、こんなんじゃ俺たちは倒せねえケドよ。」

余裕の対応。怪人にとっては予想の範疇である。
だから、気がつかなかった。ミサイルを越える破壊兵器が日本
にあることを…。
ブン
音速。早すぎる動きで怪人を吹き飛ばす何かがあった。
べキャ

「グボッ!」

ザンジオーが空中に吹き飛んでいるころ、カミキリキッドは何
もできずうろたえていた。

「な、なんだ?」

ドガッ

「うごぉおお…ぁあ。」

カミキリキッドはようやく理解した。
青と黒でデザインされた人型兵器。この間破壊した、特戦隊の
アレに似ている。

「G4。それが、俺の名だ。」

特戦隊のG3を発展強化した小沢澄子の新作、それがG4。G3をベ
ースとしながらもその戦闘力はG3を遥かに凌駕していた。

「っくそ。なめやがって!」

ザンジオーは、すばやく立ち上がり、土を払う。
そして、G4をにらみつける。

「ぶっ殺してやるぅ!」

吐き出された火炎。この間のヤツはこれだけで勝てた。こいつ
がいくら強かろうが関係ない。こいつは俺を馬鹿にした。
だから、絶対に許さない。
ザンジオーには強い信念があった。自分は優れた怪人であると
いう自信、誇り。それを傷つけるものは誰だろうと容赦はしな
い。
ゴオオオオ

「ふん。」

だが、G4はその火炎をいともたやすく避けてしまった。
まるで、そこに攻撃がくるのを予測していたかのように。

「なにぃ!」

気がつくとザンジオーは自分が首だけ飛ばされているのを感じ
た。
一体いつの間に、自分の首ははねられた?理解できない。
だが、一つだけわかる。こいつは許せない!絶対に!
ザンジオーの首はカミキリキッドにそれを伝えた。
言葉ではなく、力強く見ひらかれたその目で。

「…次は貴様だ。」

G4はGM-01改…G4専用の銃…を右太股から取り出す。
バンバンバン
躊躇いなく放たれる弾丸。
あるいはG4のモニターにはすでに勝利が映し出されているのだ
ろうか。

「ぐあ…。なんだ、こいつ!」

カミキリキッドは自分もザンジオーのように惨めな死体になる
のかと思うと、気味が悪くて戦闘どころではなかった。

「くそっ。」

毒ガスを吐く。付け焼刃の抵抗だとわかっている、それでもむ
ざむざ死にたいとは思わない。
その毒ガスもものともせず、G4は引き金を絞る。
その弾丸はことごとくカミキリキッドを貫く。

「…どうなってやがる…。」

バン。
最後の弾丸はカミキリキッドの眉間を貫いた。
そして、怪人は大の字に倒れた。

「…終わりだ。深見大佐、帰還する。」

G4は何事もなかったように深見大佐のいる天幕へ戻っていった
…。

自衛隊員たちはときの声を上げていた。大きな犠牲の上での勝
利。自分たちの存在証明が明らかにされたことへの喜び。



「…氷川君…。」

病室のベットで、小沢は眠る氷川の手を握っていた。

その顔には、珍しく不安の影が過ぎっていた…。





ウインスペクター、ソルブレイン、エクシードラフト
・・・・ん〜、自分ってメタルヒーローの知識が浅いなぁー(待てコラっ)
せっかく送って下さったのにビーファイターくらいしか分からなくって申し訳ないです
さて次回はどうなってしまうんでしょうか!?