「10年……か」

 

 

「良く出来ました。おやすみ、KOS−MOS」

 

 

「あの時、ベガは彼の手で死んだ筈よ?!」

 

 

アリスという名を持つ者は、揺らぎの中から人と出会うであろう』

 

 

ナムコXカプコン
第一話/1「揺らぎの街のアリス」

 

 

「……で、ナムコシアターに行く途中でそんな事が起きたというわけか」

某無免許黒い医者を連想させる白黒(医者とは色は逆位置)髪の男性が腕を組んで言う言葉に、
唯はこくこくと何度も頷いた。
信じてくれないかもしれないがさっきの出来事はれっきとした事実。
それ以外に何の言葉も出てこない中、男性は口を開いた。

「どうやらさっきの力はシギリアの血を持つ者って名乗った奴と見ていいみたいだな」

「そのようじゃの。さっきの地震でメテオで地面が押しつぶされるかと思ったぞ」

「ゲームと現実を一緒にするな」

へ?
二人の言動に唯は追いつけなかった。
女性の言葉に男性が呆れながらツッコミを入れる場面は関係無い。
この二人は「これで納得がいった」みたいな感じで、
話していて逆に唯が大丈夫なのかと心配しそうになった。
不思議に思いながらも唯は恐る恐る尋ねる。

「あ、あの……二人は何者なんですか?
 どうしてあんなにあっさり納得出来たんですか?」

「……」

「絶対警察関係者じゃありませんよね?」

男性がどう言おうか悩んでいる時に唯はあえて付け足す。
冬香や恋華に聞いたのだが赤いジャケットを身につけた
国際的秘密部隊が存在すると聞いた事がある。
恋華曰く「簡単に言ってしまえば対オカルトだ」らしいが、
秘密ならばどうして恋華はあっさり知れたんだろう?
ふとそんなどうでも良い事を思い出していたら
男性が説明を開始した。

「君の読みどおり、俺達は警察関係者じゃない。
 森羅という組織から派遣されてここで戦っていた。
 ここ渋谷が完全閉鎖地区なのもそういう理由だ」

「森羅というのは裏で働いておる組織のことじゃ。
 簡単に言ってしまえば……妖怪退治屋!」

「要するに対オカルトってわけですかい」

例えに対して思わず唯がツッコミを入れてしまう中、
内心ラッキーと安心していた。
すぐに納得してくれたのと先ほどの現象に対して詳しそうな人達が現れたからだ。
ホッとしていると女性が自分と目線を合わせるように
体を曲げると自己紹介する。

「そう言えば名乗るのを忘れておったのぉ。
 わしは小牟(シャオムゥ)って言っての、
 こっちの白黒髪は有栖零児というわしのヘソクリを盗ったセコい男じゃ」

「変なことを吹き込むな。それに第一お前はこうでもしないと仕事をサボるだろうが」

小牟と名乗った女性の言葉に対して零児という名の男性は
呆れたようにツッコミを入れると、小牟は零児の方を向いて
悔しそうに文句を言う。

「だからってわしのヘソクリを盗るでない!
 あれにはたっっっくさんお金が入っておるのじゃぞ!?」

「だったら今度からもっと別の場所に隠せ。あそこはバレやすいぞ」

「大きなお世話じゃ!!」

零児の注意に対しても小牟はヤケクソ気味に怒鳴る。
唯はその会話を一人暢気に聞いていて、
ふと「何処に隠してたんだ?」とつい疑問に思ってしまう。
大方タンスの中(本当はベッドの下)辺りだろうと
考えていたらまたグニャグニャグニャァと空間が歪むような感覚が三人は同時に感じる。

「おっ、来たようじゃぞ。零児!!」

「そのようだな……。確か唯と言ったな。
 ちょっとしゃがんでいろ、すぐに終わるからな」

零児の言葉に対して唯は頷くとその場にしゃがみこむ。
それと同時に三人を囲むように現れるのは
足が無くてその場に宙に浮いている青色の鼬三体で、
両手が鎌になっていて顔らしき部分に赤と白の仮面をつけている。
それは例えるならば鎌鼬という妖怪であろう。
零児と小牟はそれに反応すると素早く己の拳銃を取り出す。
零児の拳銃は緑色の銃「柊樹(ハリウッド)」と金色の銃「金(ゴールド)」、
小牟の拳銃は銀色の銃「銀(シルバー)」で明らかに普通のものじゃない。

銃の型で行く! 小牟、手伝え!!」

「分かっておる! ちゃんとフォローはしてやるわい!!」

二人はそう会話すると三方にいる敵にそれぞれ拳銃を向けると、
引き金を素早く引いてドンドンッと撃ちまくっていく。

「グギャァ!!」

「ヒデブゥ!!」

「イッカイダケデイイカラ、ステーキガクイタカッタァー!!」

それぞれ意味の分からない悲鳴を出してゆく鎌鼬は
明らかに攻撃が効いていて一方的にやられていっている。
……約一名悲鳴じゃないのがいるけれど気にしてはならない!!

「うわっ……」

しゃがめってこういう意味だったんだ。
銃撃戦が行われている中で唯は納得する。
ダンダンッと撃たれて穴が開いていく鎌鼬、
血が出てこないけれど貫通していくその様子もまた気持ち悪くて
吐き気を感じてしまい思わず唯は口を手で塞いでしまう中
シュワァァァ……と炭酸飲料の入った飲み物の蓋を取って
聞こえる音が三つほど聞こえてきた。
その後零児が金と柊樹をしまいながら唯に向かって言う。

「……終わったから顔を上げていいぞ」

「今の音ってもしかしなくても鎌鼬消滅音ですか?」

「あぁ、一匹残らず倒したところだ」

零児の言葉を聞いて唯は立ち上がって周りを見渡す。
確かにもう鎌鼬は一匹残らずいない。
そういえばどうでもいい事叫んでたの誰だったんだろうと、
ついつい考えてしまう唯。
いや、意味無いっていうのはちゃーんと自覚しているけど。

「あっ、そじゃ!! 零児、ヘソクリ返せ!!」

小牟はふと気付いて零児の腕をつかんで要求する。
零児は腕にくっついてきた小牟に顔を向けると
溜息を付きながら答える。

「分かった分かった。まず本部に着いてから……」

「ってかヘソクリいくつあるんですか?」

「5万以上はあるわい!!」

唯の質問に小牟がやや乱暴気味に答える。
それに対して厚み結構あったなと思い出す零児に
母さんのヘソクリより多いなぁと呟く唯。
こいつ等は何をどうでもいい事考えておるんじゃ、と
つい呟いてしまう小牟だったが目を見開いて言う。

「……待て、お主等」

「ん? ヘソクリはいらんのか?」

「ちゃうわい!!」

零児の言葉に小牟がツッコミを入れる。
だったら何だと問いかける零児に、
小牟は重い溜息をついて言う。

「まだ分からんのか、おぬしは……」

「お前なぁ、それで分かるとおもっ……
 …………ん?」

零児も何かを感知したらしく気を引き締める。
唯にはそれが分からず不思議がっていると、
またあの感覚が現れる。

ドォォォォォォォン……!!

地面が歪むような感覚に一瞬襲われたと同時に
現れるモンスターは、さっきの鎌鼬とは異色のモンスター三体であった。
半透明で体の形が
顔と体が一緒になっていて両腕の先が膨らんでいて長い。
その分足が短いのは勿論お約束であります。
色からしてファンタジーというよりもSFに近くて
深呼吸のような鳴き声を出している。
ナムカププレイした人には分かるであろう、
ゼノサーガの敵キャラであるグノーシス……ゴブリンである。

「うわっ! また妖怪さんが出た!!」

「おっ、新参者じゃな……。
 わしもあのタイプは初めて見るわい」

唯の言葉に続けるように小牟が続けるように言う。
零児は極々冷静に金に銃弾を入れながら
ゴブリンの体を見て解析する。

「体が透けているとこからして幽霊だな。
 ならば先手を打つ!!」

そう言って金をゴブリンの一体目掛けて撃つ!!

……スッ

「「あ」」

しかし銃弾がゴブリンを通り抜けてしまった。
それをしっかりと目撃した二人は零児に顔を向けると
何やってんだ、お前という目つきで見る。
それに気付いたのか零児は腕を組んで言う。

「ちゃんと霊体処理は済ませてある銃弾でやった。
 だから相手に一切の攻撃は通じないという事か……?」

「いや、奴等はしっかりと地面を踏んでいる。
 何か奴等を攻撃出来る原理がある筈じゃ」

小牟が腰に手を当てて零児に助言する中、
唯は自分にも何か出来る事は無いかと周りを見渡そうとするが
効き目のありそうなものは何も な い !

「……最悪、逃げるしかないかもな」

「はぁ!? 零児、正気かぁ!!?」

「相手を攻撃出来ないんだ。向こう側は分からないけどな……!」

小牟が目を見開いて驚く中で零児が答える。
それを合図としてか、ゴブリン達が一斉にこちらに向かってくる!!

「来なくて良いですってば〜!!」

唯が半分悲鳴が混じった声を出す中、
零児は唯を己の後ろに下がらせながら小牟に向かって問う。

「くそっ、小牟! 縛の型は出来るか!?」

「聞くかどうか分からんが、とにかくやって……」

小牟が言っている途中で、突然三人とゴブリン達の間に
一筋の光が落ちてきた。

ズドオォォォォォォォォン!!!!!!

「「「!!!??」」」

その音に反応して三人が光を見ると、
徐々にその光は消えてそこに現れるのは
月のように曲がった鎌を持つ真っ赤な瞳を額についてあり
頬らしき部分に赤い刺繍がある紫色の球体であった……。

「オリカビですかー!?」

「おいおい、今度は何じゃい!?」

「こんな時に何者だ!!」

唯と小牟が驚きで叫ぶ中、零児が刀の一つ「火燐」を抜く。
その球体は三人の方に顔(体?)を向けると
鎌を地面に深く刺しこみながら言う。

『……有栖、仙狐、末裔、か。
 お前等には始まったばかりでゲームオーバーにはなってほしくないからな。
 これもまた門の意思であり、あの女の願い。
 時が来ればこの魔物共に勝てる方法を持つ奴等が現れる』

良く見ると鎌の向こうにいるゴブリン達がこちらに来れない。
どうやらこの球体は鎌を地面に刺して結界を張ったらしく、
零児と小牟が警戒する中、唯がつい呟いてしまう。

「いや、あなたは誰ですか?」

『……名は無い。門は我を門番と呼ぶ。
 我がここに現れたのは、彼奴の願いを無事に叶える為』

そう言うと門番と名乗った球体は鎌を残したままその場から消滅する。
鎌が残ってくれているお陰で結界は残っていてくれてて、
ゴブリン達はこちらには侵入出来ない。

「あいつ、一体何だったんだ?」

「でもある意味危機一髪……」

零児が不思議がる中で、唯がホッとしたように呟く。
その時小牟は何かに気付いたように後ろを向いて
零児に向かって言う。

「零児! またゆらぎが来るぞ!!」

「なにっ!?」

その言葉を聞いた零児は後ろを振り返り、金を向ける。
それと同時にまたもや揺らぎが発生する!!
そして現れた者達を見て小牟は呟いた。

「……メガネ、無表情、ロリ。色々取り揃えてきおったのぉ」

「何気にSFチックですね」

唯が小牟に続くように呟く。
現れたのは三人の女性で、
一人は眼鏡をかけていて、肩より少し長い茶髪で
黄色い洋服に身を包んでいてついでにストッキングも身につけていて
何か左腕にオレンジ色に近い赤色の大きな武器装備している女性。
一人は桃色の髪を持ち、黒色の丈が短い服を着た
唯と年はそんなに変わらないであろう女の子。
一人は水色の長髪で額にバイザーをつけていて、
白いアーマーのようなハイレグカットを身につけた
最初の女性と比べると少し年下な感じの女性。
唯が呟いたように三人の服装はどちらかというと
SFに近く感じる中で、小牟曰く「メガネ」の女性が起き上がる。

「う、うぅ……。こ、ここは?」

「シオン、お怪我はありませんか?」

小牟曰く「無表情」の女性はシオンという名らしきメガネに声をかける。
シオンは眼鏡をかけなおしながら無表情に答える。

「えぇ、大丈夫。それにここはあなたのエンセフェロン内よ。
 怪我というのは身体に物理的損害が発生した時に使う言葉で……」

「あ、あの……シオンさん……」

意味不明の単語を出して説明をしていたシオンに
小牟曰く「ロリ」の女の子はおずおずと声をかける。
シオンはロリに気付くと驚いたように声を上げる。

「えぇ!? も、M.O.M.O.ちゃん!?
 どうしてM.O.M.O.ちゃんまでKOS-MOSのエンセフェロン内に……?」

シオンがロリ……M.O.M.O.の発言に驚く中、
煮え切ったのか零児が三人に向かって叫ぶ。

「おい! ここは完全閉鎖地区だぞ!!
 何をやってるんだ!!」

「え、えぇ!? ち、ちょっと……KOS-MOS!」

その発言に対してシオンは驚きの声を上げると
無表情……恐らくKOS-MOSであろう名前の女性に話しかける。
KOS-MOSは極々冷静に答えた。

「ここは仮想空間ではなく、現実の世界です」

「そんな! ここはエンセフェロン内じゃ……!!」

「それじゃここは何処なんですか?!」

「そ、それは……」

混乱を始めてしまう三人組を見て、
零児が不思議がりながら言う。

「一体何の話をしてるんだ……」

「えーと、何かエンセフェロンとか仮想空間とか言ってますね」

「それは分かってる。
 ……オイ!」

唯にツッコミを入れた後、零児は三人に声をかける。
それに対して三人が反応して零児の方を向くと
急いで非難警告を出す。

「民間人は早くここから逃げろ!
 こいつ等には攻撃が利かない、守ってやれないんだ!!」

ガゴォッ、ガゴオォッ!!

その直後、何かがぶつけられる音が聞こえてくる。
一同はそちらを見るとゴブリン達が
結界を作っている鎌を攻撃していて今にも壊れそうな状態になっていた。
そのゴブリンを見たシオンは驚きで声を上げる。

「ぐ、グノーシス!? そんな、どうしてこんなとこに!!」

「驚いてる暇があるなら早く逃げろ!!」

零児はそう言うと金を握り直す。
それを見た小牟は水燐を持ち、ゴブリンの方に体を向ける。
まだ混乱しているシオンを知ってか知らずか、
KOS-MOSは喋り出す。

「お心遣い感謝します。シオン、ヒルベルトエフェクトを使用します」

「駄目よ、KOS-MOS。不確定な状況下では危険すぎるわ!」

その発言で我に返ったシオンはその提案に否定するけれど、
KOS-MOSはその意見に対して反論する。

「今の状況の方が危険と判断します」

「シオンさん! このままじゃあの人達が危険な目に合ってしまいます!!」

KOS-MOSに続くようにM.O.M.O.が言った直後、
鎌は大きな音を経てて壊れた。

ドッガァァァ!!!!

「…………!!」

鳴き声(深呼吸にしか聞こえない)を出しながら、
ゴブリン達は一番近くにいる零児達に攻撃を仕掛けてくる!!

「オレサマ オマエ イタダキマスって奴じゃの!」

「適当なニュアンスはせんでいい!!」

小牟の言葉に対して零児がツッコミを入れながら、
金をゴブリンの一体に向かって合わせる
と、同時にシオンがKOS-MOSに向かって命令した。

「くっ…! KOS-MOS、ヒルベルトエフェクト発動!!」

「了解しました。ヒルベルトエフェクトを発動します

その命令を聞いたKOS-MOSはバイザーからスコープがスライドして
彼女の目を隠すようにスコープが位置づけされると
そこから大きな光が発動される。
その光が放たれ、ゴブリン達が実体化していく中で
零児は金の引き金を引く!!

パァーンッ!!

「…………!!?」

それはゴブリンの身体を貫き、撃たれたゴブリンは地面に落ちる。

「この場で滅ぼす。いいな、小牟?」

「合点承知の助じゃ! 任せい!」

零児と小牟は走りながらそう会話すると
ゴブリンに近づいて、攻撃を開始する!!

「火燐!」

まず零児が火が宿っている刀でゴブリンを切り、

「銀(シルバー)!!」

次に小牟がゴブリンに向かって銀で数発撃ち込み、

「地禮!!」

流れ込むように零児が雷が宿った刀で切って、

「水燐!!」

今度は小牟が錫杖に仕込んであった水が宿った刀で十字に切り、

「柊樹(ハリウッド)!!」

トドメとして零児が柊樹で撃ち込む!

それでやられたのか、スゥッと消えていくゴブリン。

「結果は重畳の至り…といったところか」

「うむ、結果は極上の至りじゃ」

二人がそんな会話をする中で
唯がその先頭に対して早すぎと考えていたら
あの三人も他のゴブリン達に対して走り出していた。
まず先にゴブリンに近づけたのは、KOS-MOSの方で……

「これより、近接戦闘を行います。
 R・BLADE!」

ビームソードでゴブリンに先手を取り、

「S−SAULT!」

サマーソルトキックのように回転しながら
ゴブリンを真上に飛ばすように蹴り上げると、

「F・GSHOT!」

巨大なマシンガンを取り出してそれでゴブリンを撃つ!!

「――――!!」

ゴブリンは悲鳴のような鳴き声(しつこいようだが深呼吸にしか聞こえない)を
出す中で、KOS-MOSは腹部のアーマーを開いてエネルギーを貯めると
ゴブリンが落ちてくると同じタイミングでそれを放った。

「X・BUSTER!!」

そう叫ぶと同時に放たれるのは巨大なレーザーで、
それをまともに食らったゴブリンはレーザーが消えるよりも早く消滅してしまう。

「勝利は、私に課せられた任務です」

KOS-MOSはそう言うと腹部のアーマーを元に戻していく。

「……早業……」

唖然になりながらも唯は呟くと、
急いでシオンとM.O.M.O.の方に目を向ける。
見ると向こう側も今から戦闘を始めるようだ。

「戦闘だって出たトコ勝負です! 
 ライトニングベル!」

まずM.O.M.O.がロッドを使って鐘のようなものを召還して
ゴブリン目掛けてゴーンと攻撃させる。

「スロットシュート!」

素早くシオンがゴブリンに近づいて
腕に装備した兵器……
個人携行型多用途兵器システム「M.W.S.」から
毒が宿った刃を出して切り込み、

「コンパウンドボウ!!」

M.O.M.O.が弓を出して後方からゴブリンへと放ち、
シオンはそれを避けると全ての矢はゴブリンに当たる中で
ゴブリンが落ちてくる中……

「エレクトゲイザー!!」

シオンはM.W.S.から電気を発生させて、
ゴブリンが落ちてきたと同時に攻撃する!!
それに対してゴブリンがダメージを受ける中で
シオンはスロットシュートよりも長い刃をM.W.S.から出すと、叫ぶ。

「スペルブレード!」

そう言うとシオンはゴブリンに出来るだけ近づくと
和歌を言いながら斬りつけていく!

「しのばれど、築き屍 修羅の道。月みしたびに、涙流るる」

言い終わるとゴブリンに背後を向ける。
直後、そのゴブリンは音も無く消滅する。

「私達の勝ちよ、M.O.M.O.ちゃん」

「はい! モモ達がウィナーです!」

シオンとM.O.M.O.が喜ぶ中で、
これでこいつ等は全滅出来たなと零児は呟く。
そんな中、唯は驚いたように呟く。

「門番さんの予言が当たった……」

「え? モンバンって?」

「言葉の通り、門の番をする者の事を意味しています」

「「いや、それじゃないって(じゃろうが)」」

KOS-MOSの言葉に対してシオンと小牟はツッコミを入れる。
アハハハハ……と乾いた笑いをしてしまう唯だったが、
M.O.M.O.が唯に近づいて質問してきた。

「あの、門番さんって何かあったんですか?」

「あっ、うん。実は……」

唯が説明しようとした時、自分達がいる方向とは
違う方向から食い込みの入った青い服を着た三人の女が現れる。
それを見た小牟は驚き半分諦め半分で言う。

「また民間人が紛れ込んできおった……って、
 今度はどっかのコンパニオンか?」

「いや、身のこなしを見る限り素人じゃない。
 ……油断はするな」

零児がそう言うと同時に一同に緊張が走る。

「シンラのエージェント、
 アリス・レイジと確認。
 サンプルデータと87%一致します」

髪が一番短い女性……ユーニは零児を見て
己の記憶上に有る資料を思い出しながら言う。
それを聞いた髪を三つ編みに結んだ女性
……キャミィは納得すると、また質問する。

「情報通りだな……。隣の小さいのは?」

「センコ・シャオムゥと確認。
 サンプルデータと100%一致」

ユーニはキャミィの質問に対して、
零児の時と同じように答えると
シオン達が目に入りユーニはキャミィに問う。

「データが存在しない者達に対してはどうしますか?」

「任意で排除しろ。私はシンラ本部に向かい、あの方と合流する。
 お前達は二人を足止めしつつデータのサンプリングを行え」

キャミィはそう答えるとその場から撤退する。
ユーニと髪の毛を一つの団子状に括った女性……ユーリは
それに従い、戦闘スタイルに身構える。

「了解しました。これよりサンプリングを行います」

「任務:了解。モード:移行」

二人はそう言うとこちらに向かって接近してくる。

「小牟!」

「言われなくても分かっておるわい!」

零児が名を呼ぶと素早く小牟が前に出ると
勢い良く両手を前に出して叫ぶ。

「白虎砲!!」

直後、虎の顔をした白い波動がユーニとユーリ目掛けて発射される!!

「一方方向にしか放たれないと判断。
 左右に大きく避ける事を提案」

「提案:同意」

ユーニの提案にユーリが同意すると二人は左右に大きく離れると
白虎砲が二人の間を飛んでいった。

「あらま」

「あらまじゃないですよ!
 ってか、あれ曲げられないんですか?!」

「すまんの〜。わしの攻撃はほとんどが一直線もんじゃ」

「聞きたくなかった答えを出してほしくなかった……」

「漫才している場合じゃないだろ」

小牟と唯の会話を聞いた零児は呆れながら呟く中で、
KOS-MOSがR.BLADEを取り出すと
零児に向かって問う。

「相手は明らかな敵意を持っています。
 排除すべきだと判断しますが?」

「半殺しで抑えておけ」

零児の答えに対して、怖っと声を漏らす小牟。
その時、ユーニとユーリが来た方向から
青色のチャイナを身につけてパンストを履き、
髪を二つのお団子上に結んだ女性が現れる。
少なくともこの中では一番年齢が高いであろう……。

「あなた達、待ちなさい!!」

彼女の姿を見て、思わず唯はギョッとして質問してしまう。

「あの、自分の年を……勘違いしてませんよね?」

「君、そういう発言は駄目だと思うんだけど……」

シオンが呆れたようにツッコミを入れる中で
女性は彼等に気がついて驚いたように言う。

「えぇ!? ちょっとここは完全閉鎖地区なのよ!
 何をやってるの!!」

「それはこっちの台詞だ!
 こいつ等は何だ、あんたは誰だ!!」

零児が素早く反論する中で、
女性は立ち止まると己の自己紹介に入る。

「私は春麗。ICPOシャドルー特別捜査官の春麗よ」

「シャドルー……、シャドルーだと!?」

「って事はあのコンパニオンどもはベガ親衛隊か!!」

零児と小牟が迫ってくるユーニとユーリが何者なのかを
女性……春麗の発言で察する中で
ニュースでシャドルーの存在を知っていた唯は
苦笑しながら質問する。

「零児さん、小牟さん……何かシャドルーにやりました?」

「「やってない!!」」

ハモりながらの即答にそりゃそうだ、と唯が納得する中で
KOS-MOSがユーニとユーリの方へと走り出した。

「あっ、KOS-MOS!?」

「ターゲット“ベガ親衛隊”の二人を排除します」

シオンが止めようとするけれどKOS-MOSはそれを無視して、
R.BLADEでユーニに切りかかる!!

ブンッ

「過去サンプリングデータに該当記録なし」

その攻撃を間一髪で避けたユーニはKOS-MOSに対して冷静に分析する。

「詳細解析困難…」

「防衛のため、戦闘行動を開始します」

後の言葉を言ったのはユーニではなくKOS-MOSで、
二人は戦闘を開始する!!

「スパイラルアロー!」

先に攻撃してきたのはユーニで、
足を合わせると回転するようにKOS-MOSに攻撃してくる。

「ヴっ……」

その攻撃を食らい、上に少し飛び上がってしまうけれど
素早くKOS-MOSはF.GSHOTを出すとユーニ目掛けて放つ。

ドドドドドドドド!!!!

「……作戦行動の妨げと判断」

銃弾の一部を食らいながらもいくつかは避ける中、
冷静に判断するユーニ。
その時ユーニに青色の細いレーザー数本が当たる!!

「オウッ!」

思わぬ攻撃にユーニは避けきれず、
当たってしまう中で
KOS-MOSはレーザーが発射された方を見る。

「わしの青龍槍はどーじゃ! こいつは痛いぞ〜!!」

得意気に喜んでいる小牟を見て、
KOS-MOSは彼女が技を出したのだと読めた。
零児は護業を持つと小牟に向かって言う。

「小牟、お前はあいつのサポートをやっとけ。
 俺は……もう片方の女の方に向かう」

そう言って零児は春麗と応戦しているユーリの方へと向かう。
シオンとM.O.M.O.も動き出して、
シオンはユーニ、M.O.M.O.はユーリの方へと走っていく。
残されてしまった唯はその光景を見て取り残されてしまった中、
思わず一言呟いてしまった。

「……何でこうなるの?」

チームカルテットでバトルミュージカルを見に行く筈が、
シギリアの血を持つ者とやらに自分以外の仲間を飛ばされて
そして何時の間にか摩訶不思議な戦いに巻き込まれて……。
この事に対して思わず溜息をついてしまう唯。
ふと戦闘しているメンバーに目を移す。

「天昇脚!!」

「キャノンスパイク!!」

春麗とユーリが互いの蹴り技で攻撃している中で、
M.O.M.O.がコンパウントボウを取り出して
ユーリへと狙いを定める中で
零児が金で春麗とユーリへと目標をあわせて撃つ!!

パーン!

「「!」」

二人は左右に飛び避けるように銃弾を避ける。
それを見たM.O.M.O.はコンパウントボウの矢を
ユーリ目掛けて撃つ!!

「あっ、はぁっ!?」

その突然の攻撃にユーリは二発避けれたけれど、
一発腹部に刺さりそこから血が流れる。
それを見逃す春麗ではなくて、素早くユーリに近づいて放つ!!

受けなさい! 鳳翼扇!!

流れるようにユーリを蹴ってゆき、
最後には大きく真上へと蹴り上げる!!

「ハァッ!」

その攻撃が致命傷になったのか、
ユーリは大きく上に飛ばされてしまう。
その時KOS-MOS達と戦闘していたユーニが
それに気付いて攻撃してきたKOS-MOSを踏み台にして
ジャンプするとユーリをすかさずつかんで
そのまま渋谷から出て行くように逃走する。
春麗はそれに気付くとユーニに向かって叫ぶと追いかける。

「あっ、待ちなさい!!」

「おい、深追いは危険だぞ!」

「あなたに言われる筋合いは無いわ!!」

零児の忠告も無視して春麗はユーニ達を追ってこの場から離れていった。
とりあえず、ここでの戦闘は終わり
それぞれが武装を解除する中で
唯がペタリと地面に座り込んでしまう。

「ど、どうしたの!?」

「れ、零児! 流れ弾食らわせたのか!?」

「向けてない」

シオンが驚く中で、小牟のボケに零児がツッコミを入れる。
その様子に対して唯は慌てて首を横に振ると
急いで立ち上がって説明する。

「た、唯単に腰が抜けただけです!
 こんな光景……初めて見たんで……」

喧嘩とか悪戯とかならちょっとやった事はある。
でもこれは全く違う、本物の戦いなのだ。
見ているだけでも唯は呼吸が出来ない感覚を感じてしまっていたのだ。
そんな中、KOS-MOSは報告する。

「敵の反応はもう残っていません」

「あの女の人達は遠くに向かってます!」

M.O.M.O.が付け足すように言うと
シオンがご苦労様と優しく笑って褒めて
零児が腕を組んで満足そうに言う。

「そいつは重畳」

「チョウジョウ? あまり聞きませんね、その言葉」

聞き慣れない言葉に唯が不思議がっていると、
KOS-MOSが重畳という言葉に対して説明する。

「“極めて喜ばしい事”または“満足である事”。
 古代語でそういう意味を持っております」

「古代語……?」

「この娘、カラクリのようじゃの」

「正確にはアンドロイド、ですよ。
 ちょっとエロい格好してますけど言動はまるっきりそうですし」

小牟の言葉に対して唯が訂正を入れる。
零児が成る程と納得すると、
シオン達に体を向けて言う。

「何でここにいるのか聞きたいが、
 そっちも混乱しているみたいだな」

「はい……」

シオンが力無く返事する中で、
唯は誰かが自分を見ているような視線を感じてしまい
周りを見渡す中で、小牟が零児に質問する。

「零児、どうするのじゃ?」

「全員森羅の本部に連れて行くしかないだろ。
 立派に事件の当事者になってしまったからな」

「……あたしも、入ってます?」

その言葉に対して唯は冷や汗気味に質問する。
零児はそれに対してふか〜〜〜く頷いた。
ガックリと項垂れてしまう唯で、
M.O.M.O.が心配そうに声をかける。

「あの、大丈夫ですか?」

「だ、大丈夫……。ちょっと今日の自分を恨みたくなっただけです」

そういえば運勢占いが悪かったなぁ、と思い出す。
子供二人の様子に小牟が微笑ましいのぉと呟く中で
零児が人知れず溜息を付くと自己紹介をする。

「俺は有栖零児、こっちは小牟だ。
 あの少女は葉山唯って言う一般人。
 あんた等は?」

「ウヅキです。シオン・ウヅキ
 この青い髪の子はKOS-MOSというアンドロイドで、
 あっちの桃色髪の子はM.O.M.O.ちゃんというレアリエンです」

「……SF、だな」

零児は額に手を当てて思わず呟いてしまう。
シオンが不思議そうに首を傾げる中で、
唯が二人に向かって言う。

「で、結局どうするんですか?」

「本部に向かう、って言いたいとこなんだが
 それの前にちょっとある場所に向かいたいんだ。
 暫く着いてきてもらうぞ」

何処だろう?
唯が不思議に思う中で、
小牟が変にニヤニヤしながら言う。

「近くのゲーセンや茶店に忍び込んでからでもえぇじゃろ?」

「忍び込む意味が分かりません」

素早くツッコミを入れるKOS-MOSに、
小牟は察しろと怒ったように言う。
それに対して言動の意味が分かりませんと返すKOS-MOSで、
思わず小牟は呟いてしまう。

「こやつをハリセンで叩いてよいか?」

「駄目ですってば……」

シオンが力なくツッコミを入れた。
収集がつかなくなりそうなので、
零児は一同に向かって行くぞと言って先に歩き始める。
それに対して彼女達は急いで追いかける中で、
唯は途中で立ち止まって後ろを向く。

「……」

誰も、いない。
気のせいだったのかなと考えた直後、
そこにある一つの獣が見えた気がした。

「!!?」

唯がそれに驚いていると、
瞬く間にそれは消えてしまう。
一瞬だけだったが唯にはそれが分かった。

「アレって、ポケモンのスイクン……?」

青色で四本足の獣、
額にはクリスタルのようなものがついていて
ヒラヒラとした羽衣を身につけていた。
正しくあれはスイクンであったのだが
唯は急いで首を横に振ると急いで零児達の後を追いかける。
この場から一同がいなくなるのを確認すると、
スイクンは再び渋谷へと出現して唯の姿を思い出しながら呟く。

『あの娘、ユーアか……?
 ならば門の時間は近いという事か。
 そうであろう、門番殿よ』

それに反応するかのごとく、
スイクンの後ろに門番は突然出没すると
破壊された鎌を魔術で己の手元に戻しながら答える。

『ご名答。全ては順調に動き出している。
 ……後は、あの娘があの世界に行くだけだ。
 お前もそれを望んでいるのだろう?
 ホウオウ親衛隊の一人にて、浄化の水

『まあな、だが勘違いするな。
 俺達はシギリアの味方をしてるんじゃない。
 主様が、あの小童を己の王として認めたからだ』

そう言いながらスイクンは空を見上げる。
それを聞いた門番は鎌を持ち直すと、
同じように空を見上げると問う。

破滅の雷結晶の炎は?』

『ライコウとエンテイの事か。
 あいつ等は別の場所で前を見る者と導く者を探しに行った。
 ……個人的にライコウが心配だ』

『そうか。それでは、私はコレで……』

門番はそう言うとその場から消える。
それを見送ったスイクンは、
空を見上げるのを止めると唯達が向かった方向へと歩いていく。

 

 

 

次回【バトルミュージカル】

 

 

 

後書き


唯「戦闘シーン、実は苦手ですか?」
作者「イエェース!!
零児「大きい声で返事する事じゃないだろ」
小牟「ってかわしをもっと目立たせんかい!」
作者「わがまま言わないでよ! ゼノサーガメンバーもいたんだし!!」
KOS-MOS「ゲームと戦闘の方法が違ったのですが、これはどういう事ですか?」
M.O.M.O.「シオンさんが近距離でモモは遠距離でしたね」
シオン「遠距離と言ってもコンパウンドボウばっかだったけどね」
作者「あぁ、実はそれって小説で書きたかった奴の一つ」
唯「へ?」
作者「組み合わせだよ、組み合わせ!」
小牟「ダブルユニットの事か? それがどうかしたのか?」
作者「ペア同士で行かなきゃいけないのを崩してみました♪」
零児「……どうでもいいだろ、それ」
作者「うわっ、ひっでぇ!!」
KOS-MOS「色々と重要なキーワードが出たようですが……」
作者「説明はせんぞ。面倒だから」
唯「そっちですかぁ?!」
作者「まーねー♪ さてさて、お次は冬香編いっきま〜すっと」
唯「システム説明!!」
作者「あっ、そうやった……。
四人の主人公が存在しますけど、ぜ〜んぶ同じスピードで違う話は書きませんぞ?」
唯「ナムカプ本編でも沢山分岐があったじゃないですか。
本来四人主人公がいるのはその為なんですよ〜!
分岐ごとに別けるって感じで♪」
作者「な・の・で、基本的には唯パートを主に進めていくザマス。
冬香・恋華・亜樹パートは必要に応じて書く事になっているっぴ」
零児「……待て。3パートが限界だった筈だぞ、本編では」
作者「物語が進んでいけば分かるってーの……」
唯「それでは次回【バトルミュージカル】楽しみに待っててください!」
小牟「見ないと小牟、泣いちゃうぞ♪」
KOS-MOS「泣く意味が分かりません」
シオン「分からなくていいわよ、KOS-MOS……」




ほぼナムカプの内容と同じのようで創作ならではのダブルユニット崩しや
オリカビ(オリジナルカービィ)や伝説ポケモンのスイクンが登場など違う展開。
さしずめ、NAMCO×CAPCOM+NINTENDOってとこですね。
鎌鼬の三段オチには笑いました。
恋恋さんありがとう御座いました。