人は信じない。ここ以外にも別の世界があることを。

 

 


人は知らない。確実にこの世界に侵入者が来ている事を。

 

 


そして……今、世界を揺るがす事件が始まろうとしている。

 

 

ナムコXカプコン
プロローグZERO「四人の少女」

 

 

カタカタカタカタカタカタ

YH>それで、結局どうするの?
AS>そりゃ渋谷通るに決まってるだろ!!
FO>渋谷は完全閉鎖地区なの忘れたの?>AS
AS>隠れ鬼みてぇに行きゃ良いんだ。何とかなるだろ
RA>汝はともかく我とYHがやばいと思われる>AS
FO>というか私んとこのヘリで行った方が早いような……
YH>いや、さすがにそれは駄目だよ>FO
FO>それじゃ、どうしろと?
RA>無難に諦める道が良いと判断

パソコンの画面に映るチャット画面。
FOとRAの発言に対してYH……葉山・唯(ハヤマ・ユイ)は苦笑する。
少し癖毛が入った茶色い短髪で今はピンク色のパジャマを着ていて、
今は机の上でノートパソコンをやっている。
AS・FO・RAはネット上の友達ではなく、自分の幼馴染であり大親友達だ。
このチャット会場もRAが作ったアドレスのみで行ける秘密のチャットである。
ふと唯はログを少し見ようかなと思ったがハッと気付く。

「早く質問に答えなきゃ……」

返事が待っているだろうし。
唯はそう呟くとタイピングミスをしながらも、
漸く答えを書き込んだ。

YH>た、頼み込む?
RA>アホ山アホ子>YH

やっぱり一番早く返事してきたのはRAかと苦笑する唯。
自分達の中で一番パソコンとゲームが得意なので、
タイピングもかなり早い……。しかも嫌味として運動神経も良し。

FO>ASの意見以上に無理よ!
AS>そっちの方が無理だろ
YH>やっぱりそうだね;;

一斉の叩きに唯が苦笑する中で、ふと壁にかけている時計を見る。
もう11時30分で良い子はとっくに眠っている時間だ。
寝ないと駄目だなと思い、唯は書き込む。


YH>もう時間も無いし、そろそろ寝ようよ


「おいおいおいおいおい!」

その書き込みに対して声を上げるのは
ASこと聖夜・亜樹(セイヤ・アキ)であった。
中世的な顔立ちで黒い短髪、どう見ても男の子だがれっきとした女の子だ。
方法が決まっていないのに脱落するかぁ?
そう思いながらもパソコンについてる時計を見ると、確かにもう遅い。
だが決まってないのに寝るのは嫌だ。
そう思って亜樹は書き込んだ。

AS>意義あり! 方法はどうすんだよ!?
RA>ASの方法で行くなり
FO>勝手に決めてるんじゃないわよ!!
RA>こういう無茶なのが我等チームカルテットではなくてか?>FO

「おっ、恋華の奴分かってるじゃねーか!」

恋華、つまりRAの書き込みに亜樹が嬉しそうに言う。
チームカルテットというのは自分達四人組のユニット名で、
四人で行動する時は決まってこれを言う事がルールになっている。
それに乗って亜樹はまた書き込みする。

AS>そーだそーだ! 俺等の誇りを忘れたか〜!
FO>誇りも糞も無いでしょうが。まっ、仕方ない。今回だけよ?
YH>さすがFO! 我等がリーダー!!
FO>褒めても何も出ないわよ(苦笑)

FOの許しが出た=それ決定!
この法則はチームカルテットの決まりで、
亜樹は一人でガッツポーズをしていた。
その時、ガチャっと扉が開いて亜樹に向かって怒鳴るのは……

「亜樹! さっさとチャット止めて寝なさい!!
 早朝から腹を叩かれて起きたいの!?」

己の母親:聖夜・沙羅(セイヤ・サラ)であった。
見た目こそ相当な美人なのだが、強さは亜樹曰く「サップも逃げる」程らしい。
その声を聞いてビクッと反応すると亜樹は素早く反応する。

「げっ! り、りょーかい!!」

その声を聞いて沙羅は扉を閉めて自分の部屋へと戻っていく。
亜樹はまだ死にたくねぇと呟きながら、
チャットに書き込みする。


AS>まだ母ちゃんに殺されたくねぇから俺、寝るな


「沙羅おばさんって結構怖いからそれは良い判断よ」

ASの発言に対してFO……大沢冬香(オオサワ・フユカ)は呟く。
唯や亜樹と違い、髪の色が銀色で部屋の中もかなり豪華な様子。
どうやらお嬢様の分類らしいのだがチームカルテットに入っているせいで、
そんな感じが全く感じられなかった。
そろそろ寝なきゃ駄目ねと思い冬香は書き込みを行う。

FO>OK。そろそろ皆、寝ましょう。
RA>了解。ナムコシアターのバトルミュージカルは逃げぬからな
YH>時間には厳しいけどね
AS>俺、今日ほど母ちゃんの修行に感謝した事は無いぞ
RA>また「今日ほど○○は無いぞ」か。その口癖、治したらどうなり?
AS>無理だ!(キッパリ)
FO>キッパリはつけんでよろしい
YH>ツッコミ場所違います

確かにそうね、と思いながらも書き込みしない冬香。
クラスの中でもムードメイカーな自分達はちょっとした会話でもネタになる。
色々あったわねぇと苦笑する中で冬香は書き込みする。

FO>って、漫才している場合じゃないでしょ!
RA>これが我等のノリなり。それじゃ先に落ちるなり
かんりにんたん>RAさん、さようなら♪
AS>……何時も思うんだけど、何でRAは「かんりにんたん」で登録してるんだ?
YH>さ、さぁ?
FO>単なる趣味でしょ。あいつ、腐女子だし
YH>な、なるほど;
AS>もっとマシなのつけろよ

管理人名に議論する亜樹に唯が苦笑している様子が目に浮かぶ。
冬香はその様子に対して小さく笑うと、
このままじゃ何時までもやりそうだなと思い書き込んだ。


FO>ほら、あんた達さっさと寝なさい。


「汝は保護者なりか?」

冬香の書き込みに対して退室していても様子を見ていた
RA……愛川・恋華(アイカワ・レンカ)は呟いてしまう。
本人が聞いたら絶対違うと怒られるであろうと考えながらも、
パソコンの電源を切るとパソコンの上に置いた物を取る。

「そういえばこれをゲット出来た事言うの忘れてたな」

それは某漫画キャラのイラストが入っている
黄色いサンバホイッスルであった。
赤い紐がくくりつけてあるので首からぶら下げられ、
明日はこれをつけていくつもりなのであろう。
それを一回だけ吹くとそれを元あった場所に置き、
ベッドに向かい、そのまま寝転がった。

「気のせいならよいが……何か、嫌な予感がする」

漫画やアニメじゃねぇんだから大丈夫だろうという気持ちは無かった。
ただただ、何かが起こるという勘が恋華の中で響いていた。

 

 

 

 


深夜、鉄の街の上で黒色の衣を身に纏う者は呟く。

 

 

「末裔よ、血を引き継ぐ者よ、前を見る者よ、導く者よ。時は……来た」

 

 

その言葉は運命の歯車を動き始めさせた。

 

 

 

 


そして翌日……。
完全閉鎖地区「渋谷」の中を走っているのは、
四人の子供……そう、チームカルテットだ。

「第一関門突破ぁーーー!!」

元気に大声を出すのは亜樹。
服装はMOTHERの語路が入った赤いTシャツと青色の半ズボンで、かなり動きやすそうだ。
ウエストポーチを腰につけていているのも邪魔になっていないご様子。
遠くから見れば彼女が女だと見破れる人は少ないだろう。
正しくやんちゃ坊主な彼女に向かって怒鳴るのは……。

「馬鹿! 変に大声出したら見つかるわよ!!」

チームのリーダーである冬香であった。
服装は白と青色が中心のスカートに上は緑色のチェック模様の服を着用、
銀色の長い髪はポニーテール風に結んでいて、
首からピンク色の可愛い熊さんの財布をぶらさげている。
亜樹に比べると遅そうに見えるが十分同じ距離を走っている。
その時、ピィィィ! と笛が鳴る音が前方から聞こえて
亜樹と冬香は同時に前を見る。

「どっちも煩いでありますよ」

茶色が少し混ざった黒いボサボサ髪で眼鏡をかけた少女……
恋華は口にくわえていたホイッスルを手で取りながら言う。
彼女の服装はデビルマンのイラストが入った黒いTシャツで
少し古めのジーンズを下に履いている。
勿論首にはサンバホイッスルをぶらさげていて、
肩には黒色のハンドバッグを持っている。
亜樹よりも運動神経が良いせいで只今トップを走っている。

「み、みんな……早すぎ……」

そんな中ビリである唯は息切れしながら力無くツッコミを入れる。
服装はピカチュウのマークの入った黄色いTシャツでジーンズを着用、
髪に桃色のピン止めを一つつけていて背中に小さな青いリュックを背負っている。
亜樹の次に行動的なイメージがあるが一番どんくさいのか足が遅い。
そんな中で、只今二位の亜樹が周りを見渡しながら言う。

「にしてもマジで誰もいねぇなー」(亜樹)

「完全閉鎖、だからね。いるのは私達と関係者ぐらいよ」(冬香)

「それにしては関係者の姿が見当たらぬのだが?」(恋華)

「た、多分別のトコに、いるんだと思う!」(唯)

亜樹の発言に渋谷の今の状態の事を思い出しながら言い、
それを聞いた恋華が周りを目だけで見て不思議がっていると
息切れしながらも唯が答える。
唯の様子を見て恋華は右腕につけたデジタル腕時計を見て、
まだ時間的に間に合うと判断して大声で言う。

「一時休憩を提案したい! OKか!?」

「オッケーっと! ちょっと腹減ってきたとこだしな」

「時間がまだ間に合うなら私もOK!!」

「ありがと、恋華〜!!」

それぞれ返事をすると少しずつ歩きに変えて、
近くの歩道に四人は座り込み始める。
周りに人は誰もおらず、何の音も感じない。

「走りまくってたから足がちょっと痛いわ……」

「同意。短距離走は得意だが長距離走は苦手なり」

冬香と恋華が両手で足をマッサージしながらぶつぶつ言う中で、
一人全く平気そうな亜樹は二人を見て呆れたように言う。

「だらしねぇな、おい。俺の修行経験知らないとは言わさんぞ」

「それって5年前の無人島一年生活の事……?」

「汝以外にそんな経験する奴がいるなら見てみたいわっ!」

亜樹の発言に冬香は目が点になってしまいながらも呟き、
恋華は呆れながらも律儀に裏手ツッコミを亜樹にかます。
その発言に対して亜樹はウエストポーチからお茶の入った小さいペットボトルを出しながら言う。

「代々うちの家庭で血を強く引き継ぐ者はしなきゃなんねーみたいなんだよ。
 近々賢治もやる予定なんだけどよ、あいつは逃げる気まんまんだったんだけど……
 母ちゃんに殺されるよりかはマシって言って修行選んだ」

そう言ってお茶をがぶ飲みする亜樹に対して恋華は呟く。

「……沙羅閣下は痴漢に会ったらトコトン殴り倒すタイプでありますからな」

「人は外見じゃないっていうけど、沙羅おばさんの場合オーラで分かっちゃうもんね」

唯が苦笑しながら恋華の言葉に付け足していると、
ふいに尿意が現れてしまい急いで立ち上がると三人に向かって言う。

「ご、ごめん! ちょっとトイレ行ってくる!!」

「早く帰ってこいよー」

「でもこけないようにご用心〜」

唯の言葉に亜樹と冬香が言う中で、恋華は何も言わず手を振るだけ。
それを見てから唯は近くの建物に無断侵入していく。
亜樹はペットボトルをポーチにしまっていると、
ふと恋華がDSライトでゲームをやっているのに気付く。

「何やってんだ?」

「MOTHER1・2の2だ。今はムーンサイドにいる」

ここは何度やっても不気味で慣れん。
そう付け足す恋華に亜樹はDSを覗き込むと、
確かに配置は街なのだが色は不気味で
モンスターの方も結構奇妙なのが目立つ。
ってかこんなとこまで来てゲームするなよと亜樹が呟く中、
ふと冬香の方を見てみるとMDプレイヤーから出てくる音楽を
イヤホンを聞きながら歌っていた。

「♪丸書いて丸♪ ♪ゴマ書いて丸♪」

「古っ! それってアニメカービィだろ!?」

「えぇ、そうよ。あたしが何を聞こうと勝手でしょ?」

亜樹のツッコミに対して冬香が反論する中、そりゃそうだなと同意する亜樹。
単純な奴と冬香が呟く中、恋華はセーブポイントに着いたのか
DSライトをバッグの中に閉まうと二人に向かって言う。

「そろそろ行った方が良いと思われる。
 唯はまだこっちに戻ってきてはおらぬのか?」

「聞かんでも分かるだろーが!」

恋華のボケに亜樹が笑いながらツッコミを入れる。
聞いてみただけだ、と呟く恋華に
相変わらずの性格ね、と苦笑する冬香。
そんな平和の光景の中、それは突然起こった。

 

ドォォォォォォォォォォォォォン!!!!

 

「「「!!!!」」」

地面が上下に揺らぐような感覚が三人に襲い掛かり、
肌が体から離れていく感覚に陥りそうになる中で
赤色と青色の輪に包まれた人間大の光の球体が目の前に現れる。

『子達よ、時は来た』

その球体は様々な人々が混ざり合ったような声にで喋りながら、
ゆっくりとゆっくりと人の姿へと変わっていく。
自分達の状態に動けない三人だが目と口は動かせるらしく、
球体を見るとそれぞれ言っていく。

「てめっ、何なんだよ!!」

「ちょっとあれ、何!?」

「嫌な予感が的中か……!!」

それぞれ好き勝手に言う中で球体は完全に人の形へとなった。
尖がった部分が多少ある金色の長髪を一括りに結んでいて
黒色のローブを身に纏った細めの体格を持つ高校生と大学生ぐらいの間の男性で
彼は三人を見ると語り始める。

『血を引き継ぐ者、前を見る者、導く者、汝等は行かねばならない。
 汝等がここに存在する事は、我は望んではいない。
 さぁ、異界へと舞え。異界へと飛べ。
 汝等四人は選ばれた存在だという事を恨むかどうかは好きにせよ……』

彼が話し終わった直後、建物から漸く唯が出てきた。
それと同時に冬香の体が少しずつ少しずつ消えていく。

「冬香!?」

「慌てないで! 私は大丈夫!!
 私達は四人揃ってるからこそチームカルテットだから、
 絶対に再会出来るから……少しだけお別れなだけ!!」

冬香がそう言い終わると同時に、彼女の体は消えてしまう。
その状況に唯も亜樹も恋華も声が出なかった。
唯は状況が全く分からなかったけれど
本能的に“今、とてつもなくやばい”という事は分かった。
その時、恋華がフッと小さく笑うと呟く。

「……どうやら次は我のようだ」

「何だと!?」

「れ、恋華!? それってまさか……!!」

それに対して亜樹と唯が驚く中、
恋華の体は確かに少しずつ消えていっていた。
体が消えていくのを感じながらも恋華は腕を組んで目を瞑るとゆっくりと言った。

「安心しろ。我が死ぬ事ではない。
 彼奴が言う「時」が今ならば、我等はステージに飛ぶだけだ。
 今はMOTHERで例えるならば主人公と仲間とこんだての名を名付け終わった時。
 仲間がいる場所はそれぞれバラバラだが必ず会えるようになっている。
 事実は小説よりも奇なりだ、再び会える時を我は待とうぞ」

恋華がそう言ったと同時に彼女は完全にその場から消えてしまう。
唯と亜樹がごくりと唾を飲み込む中、
ふと亜樹がもういない恋華に向かってツッコミを入れた。

「何でこんだての名前も決めなきゃ駄目なんだよ!!」

だが答えは返ってこなかった。
そんな中、亜樹は自分の体が少しずつ消えていくのを感じながらも唯の方に目を向ける。
唯も体が動けないのか、建物の前で一歩も動こうとしない。
それを見た亜樹は唯の方を見て大きな声で言った。

「ゆいぃ!! 俺、ぜってぇ皆を助けるからな!!
 もしも全員助かったんなら、あの尖がり頭をぶん殴ってやろうぜ!!
 そんでもって魔王とかそういう奴がいるなら、ついでにそれもやっぞ!!」

亜樹がそう叫び終わると同時にその場から完全消滅してしまう。
残りが唯一人になった直後、地面が上下に揺さぶられる感覚は消えて、
平衡感覚が唯に戻ってきた。
ふらつきながらも唯は男性を見ると大きな声を出して喋る。

「おとととと……。あっ、あの! 何でこんな事をしたんですか!!
 あたし達は何も悪い事は……………………例外除いて何一つやってませんからね!
 あたし達は普通の女の子だからこんな事をやる意味なんかありません!!」

『意味無き行動など存在しない。普通という言葉は存在しない。
 汝等は選ばれた存在であり、選ばれてはならぬ存在であった。
 だが選ばれてしまった以上、汝等は己の宿命を進まなければならない。
 我はシギリアの血を持つ者、末裔よ……己の運命に押し潰されるでないぞ』

彼はそう言うとまばたくする間も無く、その場から消えた。
それに対して唯は心と頭が追いつかず、ペタンと力無くその場に座り込んだ。

「……どうして?」

答える者はもういないというのに、ただ彼女は尋ねるしかなかった。
そんな時、唯に向かって女性の大きな怒鳴り声が聞こえてきた。

「くぉらぁーーー!! 完全閉鎖地区で何をやっとるんじゃ、おぬしはー!!」

その声に一瞬ドキリとしたが先ほどの衝撃が強かったせいで、
さほど顔には出ず、そちらに顔を向けると
そこには黒が多少混じった金色の髪をポニー(フォックス?)テールにしていて
黒いチャイナ服の上に赤いジャケットを着た自分より少し年上な感じの女性と
某無免許医者宜しくな感じで黒と白の短髪で左の目の上辺りに傷があり
赤いジャケットを身につけていて刀やら拳銃などを持っている男性がそこにいた。
それに対して唯は……目線を合わせないように顔を背けるだけであった。

 

 

「………う、う〜ん…」

「あっ、起きたわよ。スタン!」

冬香は頭痛がしながらも目が覚めた。
そして最初に目に移ったのは黒い短髪で身軽な服装
……例えるならば盗賊に近い感じの服を着ていて腰に短い剣を持っている女性と
金色の長髪で、白い鎧に身を包んでいて大きな剣を持った男性であった。
二人とも18,19前後に見え、ゲーム世界の住民(またはコスプレ)でしか見ない格好をしていて
冬香は二人を見て一瞬頭が追いつけなかった。

「あっ、大丈夫? 怪我は無いかい?」

心配そうに尋ねるのはスタンと呼ばれた男性の方で、
その様子を見て思わず冬香は唯に似てるなぁと思いながらも
平気と答えると己の自己紹介をする。

「私は冬香。冬香・大沢っていうの。
 ……ところで唐突で何なんだけど、ここは一体何処なの?」

それを聞いた二人は思わず顔を見合わせるけれど、
すぐにあぁ、そうかと納得すると二人はそれぞれ自己紹介をする。

「俺はスタン・エルロンっていうんだ。宜しくな、フユカ!」

「あたしはルーティ・カトレットっていうの。
 それでここは……」

ルーティが言いながら顔をある方向に向ける。
冬香とスタンはそれにつられるように顔を動かすと、
そこにあったのは半分以上は破壊されていながらも
しっかりとそこに立っているボロボロの塔であった。

「ドルアーガの塔廃墟……とでも言っておきましょうか」

いや、言われても分からなければ意味が無いのですが。
内心そんなツッコミを入れながらも
冬香は大きな塔に圧倒されそうな感じだった。

 

 

「……お、思い切り頭打ったぞ」

しかもゴーンってとんでもなく大きい音と一緒に。
今、恋華がいるのは戦国時代などの城を囲む城壁の上で
ここに飛ばされた時に盛大に瓦と頭がごっつんこしたらしい。
肝心の城が無い様子からすると何らかの事件のせいで滅んだのであろう。
当たった部分を手で抑えながらも恋華はそう納得すると周りを見渡して、
最初に目が移ったのは……自分のいる城壁から見て一番遠い城壁の上にある酷い外見の剣であった。

「魔剣と、判断してよいのか……?」

それは明らかに戦国のイメージが違いすぎて恋華は呟いてしまう。
和風よりも洋風に近く、とても大きく太くて黒と紫色のまがまがしい色をしていて
黒紫色のオーラを全体に纏っていていかにも「装備したら呪われます!」って感じがする。
攻撃力と魔法攻撃力は高くなりそうだな、と思いながらも恋華は暢気に考えると
ふと魔剣のある城壁の下を見ると
そこには骸骨三体と鎌倉時代の鎧を身につけた赤い髪を持つ男がいた。

「何者だ、あやつ……? ここは恐らく上ノ伊城の筈、
 なのにあの鎧姿は明らかに年号が違いすぎる……。
 それに周りにいるのは骸骨の姿を持つ妖ではないか。
 まさか黄泉より帰ったというわけではないだろうか?
 いや、ここはあの者が言っておった異界ならば我等の想像を超える事があってもおかしくはないか」

彼等の姿を見て恋華は頭を抑えながら冷静に分析する。
その時、男の笑い声が聞こえてくる。

「ひょっひょっひょ……。
 何と禍々しい気を持つ剣よ、鎌倉殿が持つにふさわしい」

その台詞を聞いて恋華はやはりか、と呟く。
鎌倉殿……恐らくそれは歴史上でも有名範囲に入る人物の事で、
己の予想が外れてさえいなければ変な笑いをした男性はあの者かと考える恋華。
少し否定したいなと思っていたら、ひょっひょっひょ男とは違う男性の声が聞こえてきた。

「そいつはやれねぇな……。
 その剣、“そうるえっじ”は俺がもらう!!」

それと同時に現れるのは戦国時代の鎧を身に纏う髭を生やした男性で、
恋華よりも酷くボサボサの髪を一つに括っている。
その鎧を見て仮説が強くなっていく中で、
その時ダラリと眼鏡の右のレンズに赤色の粘りがある水が落ちる。

「……え?」

それを見て慌てて眼鏡を取るとレンズについているのは明らかに“血”であった。
急いで右手を見てみるとそこにはベッタリと真っ赤な血がついていて、
恋華は我を忘れて悲鳴を上げてしまう。

「キャァァァァァァァァ!!!!!!」

「「!!」」

その大きな声に反応して、二人の男は恋華の方を見る。
そして恋華はパニックになりながらも男達と目を合わしてしまい、
言葉を漏らしてしまう。

「名探偵コナンでいう、被害者役は……ご勘弁願う……!!」

咄嗟に傷の部分を右手で抑えながら恋華は言っても意味の通じない事を喋ってしまう。
彼女を見たひょっひょっひょ男は笑いながら言う。

「ひょっひょっひょ……、見慣れぬ童よのう。
 良い、捨て置け。この男と違って戦う術は持っておらぬ」

恋華の方にもターゲットを向けていた骸骨達を止めると
ひょっひょっひょ男は侍の方に顔を向きなおすと刀を鞘から抜く。
その行動に対して侍も刀を抜くとひょっひょっひょ男に対して殺意を向けながら睨む。
助かったと思いながら恋華は落ち着きを取り戻しながらも二人の様子を見る。

シュッ!

先に攻撃してきたのは侍でもひょっひょっひょ男でもなく、
ひょっひょっひょ男が連れていた骸骨の一体であった。
持っている刀(というよりギザギザの刃を持つサーベル)を
上から下へと振りながら迫ってくる骸骨の攻撃に対して
御剣はその攻撃を刀で防御する。

ガキィン!!

「そんな攻撃で、俺を倒せると思うなぁ!!」

御剣はそう言うと滑らすように刀をサーベルから離すと
そのまま骸骨の首を斬り飛ばす。
勢いに任せて首は壁にぶつかっていき、そのまま地面に落ちる。
それと同時に骸骨は魂がなくなったように倒れる。

「弱っ!!」

場所がバレたけれど攻撃がこっちに来ない事が分かったので、
思う存分感想を言うつもりの恋華で今のにも対して叫んだ。
骸骨の脆さに驚いていたらあの侍の声が聞こえてきた。

「ひとーつ!!」

このまま数を数えていくのか、と恋華は思っていたら
また新たなる声が聞こえてきた。

「久しい……久しいぞ、この匂い。
 これこそ戦場の匂いだ!!」

それと同時に現れるのは白い布で顔を包んだ大男で、鉄球を持っている。
恋華はその姿を見て自分の中で立てていた予想が“確信になった瞬間であった”

「あの姿、間違い無い!
 あやつは武蔵坊弁慶、そしてあそこにいるひょっひょっひょ男は……
 スーパーウルトラハイパーメガトン信じたくないが源九朗義経という事か!!
 黄泉帰りの線が益々強くなってきおいおった……!!」

恋華が自分にしか聞こえないように言う中で、
“そうるえっじ”は禍々しいオーラを出しながら
その不気味な目が彼女を見ているように動いていた。

 

 

「……恋華が見たら、絶対怒るだろうなぁ」

亜樹は泥水で完璧に汚れてしまった赤いTシャツを見ながら言う。
実はこれ、期間限定プレゼントでしかも抽選タイプなので
四人で応募して唯一当たった奴がこれだったので亜樹は溜息を付く。
さっきからザーザーと雨を振っていて地面は草なので体中汚れてしまう中、
自分の姿を細長い岩の影を包んでいて、前方には洋風の城等にある城壁がある。
そのおかげで恐らく自分の姿は他人には見れないと考えると
亜樹は岩から顔を出して外を見ようとし始める。
そして思わず呟いた。

「……女勇者がラストダンジョンに挑戦って感じのワールドだな、おい」

その光景を見た感想はそれであった。
緑色の羽カブトに白い衣の上に胸を覆う小さな緑色の鎧をつけていて、
金色の髪を三つ編みにしていて恋華がいたら恐らく
「天然清純タイプ」と言うであろう女戦士がそこにいた。
その周りには紺色の布に身を包んで大きな鎌を持った骸骨
例えるならば正統派の「死神」で五体いる。
今、死神の一体と女戦士が戦っているところだ。

「ワルキュリアセイバー!!」

女戦士はそう言って剣を振って衝撃波を出して死神を倒す。
そして息切れしながらも彼女は己の前の道を見ると、
一本道に走れそうで他の敵は何故か端の方に寄っていた。

「抜ける……!!」

彼女はそう言うと素早く門に向かって走り出す。
このまま俺捕まるんだろうなぁ、と亜樹が暢気に考える中で
女戦士は亜樹に気付かずに門の中へと入ってしまう。
だがその直後、門とは正反対の方向からあの女戦士が走ってきた。

「はぁ!? まさかこれって…えと、あっ、あれだ!!
 ループダンジョンか!?」

亜樹は驚きながらも小声で言う中で、
女戦士は剣と盾を握り締めて言う。

「これが、魔界村なのですか……!!」

明らかにラストダンジョンじゃねぇかよ!!
女戦士の言葉に亜樹は内心そう怒鳴る中で、
ギュッと地面の草を握り締めて悔しそうに言う。

「俺が一番やべぇかもしれねぇってか……!」

 

 

 

 


さぁ、始まった。

 

 

様々な世界の運命を賭けた物語が始まった。

 

 

四人の少女はシギリアの血を持つ者に導かれて、勇者達に出会う。

 

 

今はまだまだ序章。覚悟せよ、少女達……!!

 

 

 

 

 


後書きタイム


作者「さぁさぁさぁ、新連載ナムコXカプコンのスタートでありますよ〜!!」
亜樹「だからっていきなりアレは無ぇだろーが!」
冬香「しかも遺言みたいな言葉まで出して……あんた、それでも人?」
恋華「何を言っても無駄だ。馬の耳に念仏、豚に真珠、このことわざを忘れてはおらぬな」
作者「だからって言葉攻めは無いだろぉがぁ!!」
唯「あ、あの……ところでどうして次回タイトルを書いてないんですか?」
作者「あっ、理由は簡単。唯パート、冬香パート、恋華パート、亜樹パートに分けるから」
亜樹「てめぇに書けるのかよ」
冬香「ファイナル・レクイエムみたいな事にはならないでよ?」
作者「おいこら、てめぇ等! 作者苛めて楽しいのか!?」
恋華「作者がキャラに嫌な事を言われたりされるのは公式でも非公式でもお約束であろうが」
作者「酷い! 酷いよ、君達!!」
唯「作者さん、大丈夫!?」
亜樹「おいおい、心配しなくてもいいだろが……」
作者「亜樹、お前に思いやりは存在しないのかぁーーー!!」
恋華「五月蝿い。さっさとキャラ紹介に入らぬか!!」
作者「あーもう、分かった分かったってぇーのー!!」


葉山唯(ユイ・ハヤマ)

3月3日生まれの魚座でO型。
チームカルテットの中で一番女の子らしくて、明るく優しい女の子。
困っている人を見過ごせない性格なのだが運動神経はあまり良くない。
時々チームのみんなに迷惑をかけているんじゃないのかと悩む事があるのだが
そういう事はすぐに忘れてしまうタイプ。
一番お母さんらしくて、何気に男子にモテていたらしい。
本人はまっっっっっったく気付いていなかったけどね。
シギリアの血を持つ者に「末裔」と呼ばれている。


聖夜亜樹(アキ・セイヤ)

11月30日の射手座でB型。
チームカルテットの中で一番やんちゃで誰かに言われないと絶対に男と間違われる。
喧嘩が大好きでその腕は中学生を倒せるほどだが絶対に母親には勝てない。
頭を使うのが苦手で漫画やアニメの主人公にありそうな性格で、
勿論友情を大切にするタイプ。
男友達と仲が良く、女子からは何故か一番モテていた。
モテてる事実に対して何時も「俺、何でモテるの?」と呟いちゃうところ。
シギリアの血を持つ者に「血を引き継ぐ者」と呼ばれている。


大沢冬香(フユカ・オオサワ)

8月1日の獅子座でO型。
チームカルテットのリーダー的存在で母親がイギリス人のハーフの女の子。
三島財閥や神月財閥に比べると小さいがかなりの金持ち「大沢財閥」のお嬢様で
ちょっと気が強くてツッコミが得意、何気にカービィ大好きガール。
オールマイティタイプで何事にも動じないタイプで、
信じられない事が起きても現実として見ようとするタイプ。
女友達が多くて話好きなのだが男子には気が強い性格が苦手なご様子。
それに対して気付いているが気にしていない。
シギリアの血を持つ者に「前を見る者」と呼ばれている。


愛川恋華(レンカ・アイカワ)

2月14日の水瓶座でAB型。
チームカルテットの参謀的存在で中身はれっきとした腐女子。
クールで独特の喋り方が特徴的でマニアックな知識だけでなく、
学校の知識やトリビア等も知っているのだがその代価に視力が悪くなった。
彼女もオールマイティで運動神経も意外に良くて、
どんなに酷い事が起きようにも冷静に判断出来るタイプ。
その性格と特徴のせいでクラスから浮いていてカルテットぐらいしか友達はいない。
それに対してチャット仲間がいるので平気と本人は言っているご様子。
シギリアの血を持つ者に「導く者」と呼ばれている。


作者「これでどうじゃぁぁぁぁぁ!!!!」
亜樹「お、お疲れ様……」
冬香「というか叫ぶ意味無いでしょ」
恋華「それよりも次回タイトルを言う事を我は望む」
唯「あっ、あたしも恋華と同意です!」
作者「あー、へいへいっと……。
   唯パートは【揺らぎの街のアリス】
   冬香パートは【運命と宿命の物語】
   恋華パートは【過去と未来が交差する世界】
   亜樹パートは【亜樹の決断】でございます!
   一部イメージが違うキャラになってしまうかもしれませんが、
   そこら辺は見逃していただけると個人的に嬉しゅうございます。
   それとナムコとカプコンのゲームはこれ以外にやった事はほとんどございません!!」
チームカルテット「「「「はぁ!?」」」」
作者「では次回、楽しみに待ってくださいまし!!」

 

 

 

 


丸書いて♪お豆二つ♪おにぎり一つであっという間に
星の・・・・って違う違う!
アニメ版はもう古い扱いか、事実だから否定しないけど。

女性のスタンダード、体育会系、ハーフお嬢様、腐女子
ナムカプに負けないくらい個性的なチームカルテットのメンバーが
これからの掛け合いを楽しみにしています。

母親もすんごいかたですね「サップも逃げる」の部分で
そーいや昔、高校にボブ・サップ似の奴がいたなぁ(めっちゃトラウマ)

私もひょっひょっひょ男改め義経をはじめて見た時は衝撃でしたが
今じゃ、あの笑い方や源氏達が好きになっております。

最後にあとがきに書いてある、ファイナル・レクリエムとは以前、
連載されていたオリジナル小説です。
恋恋さんありがとう御座いました。