「滅びた筈の人間が何故ここにいる。
 しかも片方はシギリアに近い力を持っている。
 ……それに時と森の神と呼ばれたセレビィ、
 何故神と一緒にいるんだ?
 正直に答えなければ、痛い目では済まさんぞ」

レオは爪を薫達に向け、殺意を出しながら言う。
それに怯える緑を薫は抱きしめると、
ギッとレオを睨みながら答える。

「何も知らないんだよ、こっちは……。
 聞くなら俺よりもセレビィに聞いてくれねぇか?」

この言葉はれっきとした事実。
自分達を導いたセレビィに目を向けると、
薫の後ろでレオをびくびくした様子で見ている。
周りを見渡すと何体かは戦闘準備が出来ていて、
下手な行動を取ると……殺される可能性は高い。
ふわふわとマヨが扉の前に止まったその直後であった。

ドガシャァァァァァァ!!!!

「うっぎゃぁ!?」

扉がぶっ飛ばされるように爆破されて、
扉の前にいたマヨも巻き添えを食って扉共々
奥の方へと吹っ飛ばされる。
一同は一斉にそちらを向くと
そこにはサイドカー付きの黒いバイクに乗った
腹のギザギザ模様が青色の珍しいカクレオンがいた。
カクレオンはゴーグル付きヘルメットについている
ゴーグルを上げると話しかけてきた。

「お久しぶりですね、盗賊団の皆様」

「れ、レクオさんじゃないスか!?」

「……トラブルが増えたな」

そのカクレオンを見て、
ウェンがぶったまげたように驚き
レオが溜息をつきながら呟いた。

 

 

カオル
第二話【盗賊団】

 

 

その突然の来訪者に対して、
緑は不思議そうに薫に質問する。

「かおるん、あれは何てポケモンなの……?」

「カクレオン、言っちまえばでかいカメレオンさ。
 受けた攻撃に対してタイプが変わる力を持っているんだ。
 ……こいつ等の言い分からするとトラブル持ってる奴だろうな」

タラリと汗を額に流しながら冷静に説明するけれど、
内心あまり落ち着けなかった。
薫の中で赤信号が大きく響いているからだ。
レクオと呼ばれたカクレオンは薫と緑に気付くけれど、
すぐに視点をレオ達に向けると忠告する。

「ちょっとした依頼が最初あったんですけど、
 あなた方のせいで狙われてしまいましたよ……。
 イカロス会社のガーディアンズにね」

「ガーディアンズ?
 良くゴッズじゃないって分かったな」

その話を聞いていたニニが驚いたように言う中で、
レクオはやれやれと溜息を付くと
小さく笑って説明する。

「あいつ等の持ってきたモノのおかげで、
 すぐにゴッズでは無いって分かりましたよ。
 ゴッズは化学兵器ではなく技の方を好みますからね」

「マシンガンでも向けられたのでしょうか?」

「いや、レクオは100万回死んでも死なんわい……」

ニニ2号が不思議がる中で、
扉の下から這いずるように出てきたマヨがツッコミを入れる。
そんな会話を聞いていた緑が不思議がる。

「がーでぃあんず? ごっず?」

「こいつ等にとっては良い人……じゃないみたいだ。
 ガーディアンズは物理的で、
 ゴッズは魔術的なのが決まりっぽい」

「かおるん、探偵みたーい……」

「ビビィ」

「冷静に考えれば簡単に分かる」

感心する緑とセレビィに薫は溜息を付く。
その時レクオがポンと手を叩いて、
思い出したように言った。

「あっ、追手からは逃げれましたんで安心してください」

そう言うとバイクから降りて、
細長いカプセルを取り出すとそれをバイクに当てて
カプセルの中へと収納された。

「えぇ!? 入っちゃったぁ!!」

「ビビィ!?」

モンスターボールと同じ原理らしく、
緑とセレビィ以外は対して驚いていない。
レクオはそれを取るとレオに近づいて問う。

「それで……あのジャガム、
 いえ、人間どもは一体何なんですか?」

人間、つまりそれは薫と緑の事をあらわしている。
やはり来たか、と薫がレオとレクオを睨みつけるように見る中で
レオは出していた爪を引っ込めると
タバコを取り出しながら答えた。

「俺達も良く知らん。が、雌の方はシギリアに限り無く近い。
 雄の方が度胸はあるみたいだが能力は皆無だ。
 セレビィも関係しているトコからして何かしら知ってるみたいだがな」

「せれっ…、セレビィってまさか時と森の神ですか?!」

「あぁ。唯一時間の壁を無視できて、木々に生命の力を与えられる存在。
 れっきとした幻のジャガムであり、神々の一人だよ」

そう言うとタバコの煙を口から出す。
それを聞いたレクオは薫達に近づくと、
下からジロジロと観察を始める。
緑がそれに怖がる中で薫は黙って抱きしめる。
ふとそれを見たメニーが呟いた。

「ラブラブね、あんた達」

「はぁ!?」

「確かに雌を守るのは雄の仕事。
 だからって目の前で抱きしめているのを見せ付けられると、
 自分が独身なのを突きつけられるって……」

「ニニさん、どうしたのですか?」

ニニが納得した後、ブルーになる中で
ニニ2号は心配そうにニニの横顔を見る。
2人の発言に対してすっかり真っ赤になってしまった薫に
追い討ちをかけるのはマヨとウェン。

「坊ちゃんはやっぱり自分のマドンナを守りたくてたまらんみたいやなー!
 かーっ、もうラブラブ過ぎてわい困っちゃう♪」

「うおっ! マヨさん、きもいッス!!
 でもオイラも、自分の女は自分で守りたいッスよ……。
 たとえどんなに力が無くても、それが男ッス!」

「お前等、少し言いすぎだ。
 事実なのは確かだがすっかり真っ赤になってしまってるぞ」

ニャース、あんたも一言余計だ!!
薫は内心そう怒鳴っていたが、
もう恥ずかしさでいっぱいいっぱいになってしまっている。
彼等のそんな様子を聞いていた
緑は不思議そうに目をパチパチと動かす中、
セレビィと目が合ってつい疑問を零してしまう。

「まどんなって何の意味だろうね」

「ビィ」

ズッテーーーーン!!!!

本気で分かんない顔をしている一人と一匹に対して、
セレビィ抜かしたポケモン組は一斉にずっこけた。
薫自身も相当呆れていて何処まで馬鹿なんだと考えてしまう。
緑は薫に顔を向けて(薫の方が背が高い)質問する。

「ねぇ、かおるんは意味分かる?」

「……知らん」

そう言ってそっぽを向く薫。
実はさっき緑が行った質問の時、
ちょっぴり困った顔+上目がち+首を少し傾げる
……と言った可愛いものだったので
答えを知っていても言えずに顔を背くしかなかった。
それに気付かない緑とセレビィは、
一体何なのかなと互いに疑問を思ってしまう。

「結ばれるには物凄く難しいやろな……」

「マドンナって確か大昔存在した人間の聖母の事ッスよね?」

「いや、多分マヨは男性の憧れの的の方を言ったんだろうな。
 ……ちょーっと意味が違うんだけど」

「あ、あの、お話中断してません?」

男性陣の会話を聞いていたニニ2号がおずおずと話しかけてくる。
その時薫達の様子を見ていたレクオが
厭らしい笑いをしながら言った。

「私も早く本題に入りたいんですけどねぇ」

「すまんな。実力はあるが馬鹿ばっかで」

「いえいえ、構いませんよ。少し値上がりするだけですから」

「あぁ、そうか。あいつ等の金を少し出せば大丈夫だな」

あははははーと爽やかな笑顔と声で会話する2匹。
だがその会話の内容に対して、
マヨが某弁護士の如く叫びながら意義を唱える。

「ちょ、意義ありや!!
 レクオ、勝手に値上がりすんな!!
 ってかレオもわい等に払わせようとすんな!!」

「うっさいわよ」

直後、メニーが横からマヨ目掛けて冷凍パンチで殴った。
マヨはその攻撃のせいで派手にぶっ飛んで、
壁にぶつかったかと思うと少しずつ凍っていった。
それを見たニニが呟いた。

「さすが元殺し屋、相変わらず容赦無ぇ……」

「ニニ、治療しないのですか?」

「するっての」

ニニはニニ2号の疑問に答えると、
2匹共凍ってしまったマヨに近づいて
お医者さんカバンを取り出すと治療を開始する。
さっきから不幸続きのマヨに対して
緑とセレビィが本気で可哀想と思ってしまう中
レクオが話し始める。

「私がここに来た理由は簡単。
 ゴールドサン王国の姫君ソレイユの捕獲。
 またはソレイユ王女の持つ銀のティアラを強奪。
 これを盗賊団の皆様にお願いしに来たのですよ」

「俺等はあくまでも盗賊だ。便利屋ではないぞ」

「捕獲用のボールは既にこちらで用意してありますよ。
 勿論タダなのでご安心くださいませ!
 それにこれは……ゴッズの依頼ですしね」

「!?」

レクオが最後に言った言葉に一同は驚いたように彼を見る。
その行動にただレクオはニヤニヤと笑うだけで、
その笑みを見たマヨ(復帰した)は小さな声で呟く。

「ゴッズの依頼もありゃ益々ガーディアンズって分かるわ……」

「あ、あのー……」

彼等が考えている中で、
緑がおずおずと手を上げる。
既に薫の抱きしめは終わっていて、
マヨとニニはわざとらしく舌打ちする。
アホかと思いながらもレオは緑に話しかける。

「緑、どうした?」

「ゴッズとかガーディアンズって何?」

「ビビィ」

全く分からない緑とセレビィが首を傾げる中で、
薫も同じ事を疑問に思っていたのか
小声で良くやったと呟いていた。
レオが説明しようとしたらメニーがある提案を出す。

「あぁ、それは……」

「レオ、説明するよりもジュエル先生のとこに行かない?
 多分今はゴールドサン王国にいると思うし、
 あの子達の戦いの訓練にもなるでしょうしね」

「確かにここんとこ先生とは会ってなかったな……。
 よしっ、先生に押し付けるぞ。
 2号! 急いで技マシンカプセルのテレポートを持って来い!!」

「分かりました〜」

レオはそう決めるとニニ2号に命令する。
その命令に従ってニニ2号はどこからともなく、
ドクターマリオが持っていそうなカプセルを取り出した。
その時レクオが呟く。

「あれ、高級物なのにもったいない……」

「物は使ってこそ効果を発揮する。唯のコレクションじゃないっての」

「そやそや。んじゃ、2号ー! 頼むでー!!」

ニニのツッコミに同意するとマヨはニニ2号に手を振りながら笑って頼む。
ニニ2号は頷くと技マシンカプセルのボタンを押して開く。

「えっ!? ちょっ、説明はぁーーー!!」

緑が叫ぶけれど、時既に遅し。
一同はその場から一斉にテレポートされてしまう。
すれ違うように、テレポートで彼らの秘密基地に侵入する三人組が現れる。
一人はキルリア、一人はグラエナ、一人はサワムラー。
既に誰もいないその場所で、キルリアは一目見て怒鳴るように叫ぶ。

「だーっ!! 盗賊団の秘密基地はここじゃなかったの?!」

「オイラに聞かれても知らないっすよ、キリアス!
 クリスマスんとこの報告書には確かにそう書かれてたっすよね?」

苛々しているキルリア「キリアス」を宥めるように、
グラエナが言うと、ふいに周りを見渡しているサワムラーに質問する。
サワムラーはグラエナの方を向かずに返事すると推理を話し始める。

「あぁ、そうだ。恐らく彼奴等はつい先ほどいなくなったのだろう。
 ゴミも比較的少ないし、まだここが秘密基地のままだ……。
 全員いないという事はあのカクレオンかゴッズ関係の何かをしているだろう。
 彼奴等とはすれ違ったが……アレを探すには好都合だ」

アレという言葉にキリアスとグラエナが不思議がっていると、
ハッとキリアスがある事に気付いてサワムラーに質問する。

「あの例のフロッピー?」

「そうだ。この秘密基地にあるとは思えないが
 念の為にお前が一応調べておけ。
 俺はここについているパソコンでその中の倉庫に無いかどうか見てみる」

「うそ!? そーゆーのってキリアスの得意分野っすよ!
 オイラじゃなくてキリアスにやらせた方が……」

サワムラーの言葉にグラエナが不満を言うと、
キリアスが呆れながらもグラエナにツッコミを入れる。

「あたしも全部出来るわけじゃないわよ!
 ってなわけで手伝いなさいね、ポッチーちゃん」

そう言うと超能力で探知を始め出すキリアス。
ポッチーと呼ばれたグラエナは、
ガックリとうなだれながら呟いた。

「本名で呼ぶのは止めてくださいっす……」

どうやらこのポッチーは彼の本名のようだ。
物凄く呼ばれたくない恥ずかしい名前だ。
ついでに作者の私は恋恋という名前を恥ずかしいとは思っていない。

「作者! んな事は聞いてねぇーーーー!!」

「誰に向かって叫んでるんだ?」

ポッチーのツッコミにサワムラーがパソコンの電源をつけながら問う。
それに対して答えられず、泣く泣く鼻を使ってフロッピー探しに集中する。
だがキリアスとポッチーが感知出来たのは、
フロッピーではなくて銃火器+使用後技マシン(カプセル含む)+死体の肉のみ。

「……うっげーーー!!?
 なななな、何で死体の肉まであんのよー!!」

「えぇ!? そんなのあったんすかぁ?!」

キリアスが驚く中で、ポッチーがそれに反応して驚く。
サワムラーは二人の反応を見て、すぐに普通の場所には無いと分かり
パソコンから道具引取りを選択すると……

【PASSWORDWONYURYOKUSITEKUDASAI】

文字のような奇妙な姿をしたジャガムによって出来た文字と、
その下に表示されているエンターボタンが出てきただけであった。
それを見たサワムラーは驚いたように目を見開く。
探しても意味は無いと判断したキリアスとポッチーが、
パソコンを横から見てきて思い思いに言う。

「シルディア〜、これって何すかぁ?」

「普通の文字じゃないと思うんだけど……」

「アンノーン文字だ。彼奴等、こんな古代文字を覚えているとは……。
 キリアス、古代遺跡についての資料持っていなかったか?」

何処でこんな文字を覚えたんだ。
古代文字としてまだ世間に発表されていないアンノーン文字を知っている。
これはもしかしたら、盗賊団のフロッピーを盗むだけでは済まないかもしれない。
シルディアと呼ばれたサワムラーはそんな事を考えていると、
バッグからごそごそと資料を取り出しながらキリアスが声を上げる。

「持ってるけど……あっ! それと同じ文字が入ってた!!」

「貸せ。文字の解読結果が入ってるかもしれん」

「はいはいっと」

シルディアはキリアスから資料を借りると、
アンノーン文字が解読されているページを見た後
パソコンの画面を見ると空いている手で頭を抑えた。
その行動を見てポッチーがシルディアに不思議そうに質問する。

「何やってんすか?」

「……これに書かれているのは、パスワードを入力してくださいだったんだ」

「そ、そりゃエンターボタンも一緒にあるわよ……」

キリアスがガックリしたような表情でツッコミを入れる。
だがシルディアは荷物の中からある黒いフロッピーを取り出すと
それをパソコンの中に入れ込む。

「それって、パスワード解析プログラムソフト?」

「あぁ。もしも目的の物が無くてもこのパソコンから情報を得る」

「うっはー、さすがシルディア! 頭良いっすね〜!!」

「お前が頭使わないだけだ」

ポッチーの褒め言葉にシルディアがさらっと答えると、
一気にフロッピーに埋め込められていた解析プログラムが発動する。

 

 

 

ドンガラガッシャーーーーーーーン!!!!


派手な音を立ててある一室へと落ちていく盗賊団+薫と緑とセレビィ。
その部屋にいた二体の見た目がホタルっぽい虫ジャガムが
それぞれ驚きの言葉を口にする。

「うわっ! なんだなんだ!!」

「雷!? クヌギダマ!? いや、盗賊団だー!」

そのジャガムはバルビートとイルミーゼで、
まだ子供っぽい二体の言葉を聞いた
レオは立ち上がりながら注意する。

「バルス、イルス、変に騒ぐな……」

「ラピュタ?」

「いや、絶対関係ないから」

緑のボケに薫がすかさずツッコミを入れる中で、
ガチャリと部屋の扉が開いて
一人のルージュラが部屋に入ってきた。

「あら、盗賊団じゃないの。
 今回は一体どんなご用件かしら?」

「ジュエル師匠、突然ごめんなさい。
 ちょっとこの人間二匹にこの世界の事を教えてほしいんですの。
 それと武器の扱い方も……ね。
 無報酬で行くわけないと思うから、何か引き受けても良いけど駄目?」

さっきとは打って変わった様子のメニーの言葉遣いに、
薫は少し引き気味になる中でマヨがキモイと呟くのが聞こえると同時に
メニーがすかさずマヨに冷凍パンチを食らわせてやった。
ジュエルと呼ばれたルージュラは苦笑しながらも、
薫と緑、そしてセレビィを見渡すと納得したように頷く。

「確かに男の子の方は力を感じないわね……。
 良いわ、説明するのが嫌いなあなた達に代わってやってあげる。
 ただしメニー、あなたには私のやる予定だった仕事をしてもらうわよ。
 レクオも関係しているみたいだからこれだけで良いわ。
 でも出来る限り早めにお願いよ?」

「は〜いっと。ところでターゲットは?」

メニーが尋ねるとジュエルは
ジャガムの美感覚曰く「微妙」な顔のニャースが映った写真を
取り出してそれを見せながら説明する。

「フルードって言うお坊ちゃまよ。
 凄く簡単だけどアサルトライフル念の為に持っていっておきなさい」

「分かりました」

そう返事をするとメニーはこの部屋から出て行く。
レオ達もそれぞれ立ち上がると、
レオは他のメンツに向かって言う。

「決行は4時30分だ。それまで自由時間。
 ただし何かトラブルがあった時は早急に連絡せよ」

「りょーかいっと」

ニニがレオの作戦を聞いて了承するのが合図となり、
一同が部屋から出て行く中で
最後に出て行くレオがジュエルの方に顔を向けて言う。

「それじゃジュエル先生、後はお願いします」

「はいはい」

「あっ、ティアラは絶対条件ですからねー!!」

レクオが伝えるとレオは振り向かずに片手を上げると、
そのまま扉を閉めて部屋から出ていった。
そしてジュエルは話に入れていない二人と一匹に顔を向けると
ニッコリ笑って質問する。

「さて、何から答えてほしい?」

「答えてほしい?」

「答えてほしい?」

ジュエルの言葉に続くように
バルスという名前のバルビートとイルスという名前のイルミーゼが問いかける。
それを聞いた薫が某クロスオーバー漫画のキャラを思い出す中で、
一気に質問する。

「まずこの世界の決まりについて。
 ガーディアンズとゴッズについて。
 シギリアと人間の違いについて。
 今はここらぐらいで良い」

「かおるん、いっぱい分からないんだね」

「ビビ! ビビィ!」

「え? 異界の決まりが分かるのかって?
 ……あたしも説明してもらいたいな〜」

「ビィ!」

緑とセレビィが笑いながら会話する中で、
ジュエルはクスリと笑うとアイテムボールを取り出して
そのスイッチを押すとそこから出てくるのは
大きな世界地図であった。

「私達はこの世界をミュアードって呼んでいるわ」

「ミュアード? これまた変な名前だな」

薫の言葉に小さく笑いながらジュエルは説明を続ける。

「でもこれは生命の神から取った名前なの。
 ずっと昔に人間が神々の手で滅んでしまい、
 ジャガムがこの世界を支配したんだけど……
 何がどうあったのか不明だけど“中”と“外”に分かれちゃったのよ」

「中と外? 町の中と外の事かな」

「「惜しい!」」

緑の発言にバルスとイルスがハモって残念そうに言う。
それを聞いて薫は己の予想を
説明の続きを言おうとしていたジュエルに話す。

「もしかして国の外とか中の事か?」

「どっちかっていうとそっちね。
 “中”は上部分だけ透明なドームで国や街を包んでいるの。
 外からの侵入や脱走者を逃がさない為にね。
 外国に行く方法は地下鉄だけだから結構不便なのよ。
 “外”はドームの外の事でこっちは自然で一杯なの。
 でもね、外は弱肉強食そのもので危険なのよ。
 戦う以外に生き残る方法が無い、本来の獣の世界。
 といっても一部の人は外を利用している事もあるけどね。
 例えばあいつ等みたいな盗賊団やレクオみたいな奴隷商人とかね。
 中から外に行く事も可能だけど相当手続きが面倒なのでご注意を」

「ドームで? おいおい、閉鎖空間ってありなのかよ」

「ありも何も、あなた達が今いるのは“中”よ。
 私達の先祖達は知識を得たばかりに戦を怖がって、
 人間がかつて持っていた文明からこの方法を思いついたの。
 そしてそのせいでもっと戦に対して臆病になっちゃったけどね。
 だけど勿論悪い事を考える奴もいてね、
 それで外に対する利用者も一杯増えちゃったのよ」

薫の意見に対してジュエルが説明している中で、
レクオが腕を組んで少しご機嫌斜めな感じで
ジュエルに向かって言う。

「ところで奴隷商人は聞き捨てならないのですが?」

「実際ジャガム売ってるじゃないの。
 あんた、そこまでオールマイティにしなくていいから」

「えぇ!? ジャガムって売っていいの!!?」

「ビビビィ!!?」

ジュエルの言葉に緑とセレビィが声を上げる。
それに対して溜息をつくと、
ジュエルはやれやれポーズで説明する。

「表上じゃ駄目だけど裏の世界じゃOKになってるのよ。
 人間が残した文明遺産の知識を利用しているから、
 相当困ったものなのよねぇ」

「……それってモンスターボールの事か?」

「大正解。何でか知らないけどジャガムはボールの中に入れちゃうからね。
 さて、世界の決まりについてはこれでいいかしら?」

「あっ、はい。ガーディアンズとゴッズの説明に入ってください」

ジュエルの問いに緑が返事して薫が黙って頷く。

「OK。
 ガーディアンズはイカロス会社を本拠地として出来た組織。
 言ってしまえば政府や国のガードマンってところね。
 確かに頼りになる存在なんだけど、結構おっかないのよ。
 人体実験やら改造実験とか……かなりドロドロしてるの。
 あそこは別の意味で弱肉強食、犯罪者はガーディアンズの手で裁かれるの。
 色々と、酷い方法でね。そのおかげで裏の連中には嫌われているわ。
 こっちはどっちかっていうと武器と薬品メインで戦っているわ」

「な、なんだか怖い……」

「ビィ〜……」

「緑、セレビィ、お前らって思考回路同じか?」

怯える一人と一体を見て薫は呆れたように呟く。
自分だって彼女の言葉に恐怖は覚えたけれど、
相手が具体的に言わなかったからたいして怯える事は無かった。
それを知ってか知らずかジュエルはゴッズの説明に入る。

「ゴッズは言ってしまえば宗教全体を示しているわ。
 この腐ってしまった世界を自分達の手でリセットするつもりで、
 言葉巧みに信教者を増やしていっているのよ。
 神様って存在を信じているみたいだけど、
 実際はどうなんでしょうね……。
 言ってしまえばゴッズの財力を利用するために入った奴もいるし」

「言ってしまえば、どっちもろくな組織じゃないって事か」

薫の言葉にそういう事と答えるジュエル。
夢がぶち壊された感じだなと考えていると、
黙って話を聞いていたレクオが口を開く。

「そーいう事ですよ。あの女性だって被害者なんですし」

「あのじょせい?」

「ビビィ?」

緑とセレビィにはそれが誰なのか分からず
不思議がっていると
レクオはそれに驚いたような反応をするとあの女性の特徴を言う。

「おや? さっきまでいた秘密基地の近くにいたと思うんですが……
 殺す殺すって煩い殺人鬼でレベル80以上のサーナイトがね」

「「「!!」」」

それを聞いた薫と緑とセレビィは思わず顔を見合わせる。
あいつも被害者だったのか!by薫
やっぱり女性で合ってた!by緑
ってか会ったんだ、レクオさん!byセレビィ
それぞれ考えていることは違うけれど、
とりあえず驚いている事は確かのようだ。
その様子を見たバルスとイルスが不思議そうに呟く。

「会ってるの?」

「会ってるの?」

「この反応からすると会ったみたいでしょうね……。
 かなり運が良いわね、彼女は本物の鬼神と言っても可笑しくないし」

「彼女に対してはどんな攻撃も聞きませんしね。
 状態異常にしようにもシンクロをやられてしまいますし」

「待て。あの女の特性はトレースじゃないのか!?」

レクオの発言に素早くツッコミを入れる薫。
確かマヨがそんな発言した筈だったのを覚えているのだが、
どうしてそうなったのか分からない。
それを聞いたレクオはちょっと呆れたように言う。

「あなた、勘違いしてません?
 我々ジャガムの中には両方の特性を持っている者もいるのですよ。
 何をどう見てそう思ったのか知りませんが、
 彼女は恐らくシンクロとトレース両方の特性を持っているのでしょう」

「……俺、今生きてる事に凄く感謝してる」

実際あの時は本気で死ぬと思った。
ジュエルの話よりもさっきの体験の方がきつくて、
あの時マヨが巨大化(驚かすかナイトヘッドのどっちかだと思われる)で
助けてくれなかったら16歳の若さで死んだ婆様の世界に仲間入りしてただろう。
ふとその時その様子を聞いていたジュエルが話しを振ってきた。

「さーて、シギリアと人間の説明に入りたいけどOK?」

「あっ、お願いします」

「人間が神々の手で大昔に滅んだっていうのは分かってるわよね?
 まぁ、色々と禁忌の領域に入っちゃってたみたいだから仕方ないけど。
 シギリアは言ってしまえばジャガムと同等またはそれ以上の力を持った人間の姿を持つ者。
 今は相当珍しくてね、捕獲騒動が物凄い事になっちゃってるのよ。
 でも一部のシギリア達は知恵持っているみたいでね、
 何でもアマゾネスって呼ばれている胸が片方だけある雌がリーダーみたいで
 秘密裏に行動しているみたいなのよ。
 目的と場所は特定しておらず、ガーディアンズにとって一番嫌な相手よ」

「一部のシギリアって……まさか、ほとんどのシギリアは野生そのもの?」

「そうよ。といっても生存数でさえ明らかになってないからねぇ」

ジュエルの説明に薫は益々何て世界に来てしまったんだと思ってしまう。
ただ薫の中で結論出来たのは
“人間の文明を利用する事で、この社会は出来た”という事だ。

「……」

ドウシテオレガココニツレテコラレタンダ?


ナンデ、セレビィハ、オレヲマキコンダ?


オレニナニサセヨウッテイウンダヨ。

 

 

 

 


「あっづ〜……直射日光眩しすぎや〜!」

「こりゃ帽子が無いとマジできついッスね。
 うーっ、水飲みたくてたまらないッスよ」

裏路地にあるジュエルのアジトから出てきて、
表街に出てきたマヨとウェンの第一声がそれであった。

「今日は相当な夏日だな、おい。
 冷房ガンガン利かせてたな、ジュエル先生……」

何時の間にか持ってきておいた赤い帽子を被りながら、
あの部屋が物凄く涼しかった事を思い出していたレオ。
ニニは虫属性なのに暑さに平気らしく平然とした様子で言う。

「レオ、ちょっと教会に行かせてもらうぞ」

「構わないけど、どうしたんだ?」

「久しぶりに架空の神様の顔を見に行くだけだ」

そう言ってゴールドサン王国にある比較的大き目の教会へとニニは向かう。
それに着いて行くようにニニ2号も教会へと向かう。
ニニの様子を見てレオが思い出したように呟く。

「そーいや、あいつ昔はゴッズ関係者だったっけ……」

「おぉぉぉ!
 ドッキリドキドキアイスバーなんていうのが売っておる!!
 んじゃアイス買いにわい飛んでいきますさかい〜!!」

ドッピューーーンという音がつきそうな勢いで飛んでいくマヨ。
トラブルは起こさないでくれよ、と祈るけれど
あいつの場合トラブル起こす確立が高確率なので
もしもマヨが起こしたのならば他人のフリをする事を決意する。

「で、レオさんはどうするんスか?」

「無難に潜入ルート確保だ。
 どさくさに紛れて宝石も盗みたいが、
 そこまでやったら俺達自身がやばいしな」

ウェンに答えながらレオが歩き出したら、
ドンッといきなり誰かにぶつかってしまう。
正確には向こうがぶつかってきたのだが……。

「どわっ!!」

「きゃぁ!?」

レオとぶつかった人はそのせいでこけてしまい、
ウェンは慌ててレオに近づくと声をかける。

「大丈夫ッスか!?」

「このぐらいで怪我するのは栄養取ってないガキぐらいだよ。
 それよりもそっちのぶつかってきたピカチュウはどうだ?」

レオに言われてウェンはぶつかってきたのがピカチュウ族だと気付く。
そしてそのピカチュウに顔を向けると、
大きな白い帽子(炎赤と草緑の女主人公が被っているのと似てます)を
深く被っていて、あまり似合わないサングラスを身につけていた。
ピカチュウは立ち上がると鈴のような声色で謝る。

「あいたたたた……。
 あっ、ぶつかってすみません。
 ちょっと前を良く見ていなくて……」

「いや、構わないよ」

そう言ってレオは自分の帽子を被りなおす。
ウェンがオイラの入れなさそうな空気だなぁと呟いていたら、
レオは彼女(声の高さで雌と判断)に自己紹介する。

「俺はレオ、君は?」

「あ、えとソ……じゃない!
 えとその……に、ニャピィ!!
 ニャピィって言います、私!!」

「分かったから大声出さなくていいって」

(ツッコミ入れるトコは思い切り違うでしょ、レオさん!?)

その不自然な名乗り方+速攻で考えただろう名前に
ウェンは何時もなら絶対ツッコミを入れるレオがスルーした事に
心の中でツッコミを入れた。本人に向かって言うのはちょっと怖かったので。

「ご、ごめんなさい。私、ここを歩くのは初めてでして……」

「だったら俺が案内してやろうか?
 ここには結構来ているからこの街の事は知ってるよ」

「えっ、本当ですか!?」

「あぁ。この後こいつと飯食おうと思っていたところだしな」

いやいやいや、城の侵入経路は?
ってか何かさりげなくナンパしてない?
そりゃ昼過ぎだけど何時も家で食ってるじゃんか。
確かにレオさんはニャースの中でも相当かっこいいけどさ、
ニャピィさんだっけ? あんた、頬がちょっと赤くなってるよ。
ウェンが内心物凄いツッコミを入れたがっているのだが、
レオはニャピィに向かって言う。

「ちょっと上品とは言えないけど、味は一級品のお勧め店がある。
 そこに行ってみたいかい?」

「はい!」

完璧に引っかかってしまった彼女は元気に返事する。
ウェンは完璧に二人の世界と化したそれに苦笑していると
レオがウェンに早く来いと言って慌てて追いかける。

 

 

大きな十字架が教壇の後ろに立てられていた。
その十字架に描かれている模様は女性の天使で、
明らかにそれは人間であったのだ。
その十字架を祈るように教団を眺めるのは
美しい羽を持つ虫ジャガム……アゲハントであった。

「神よ、どうか人々から苦しみを取り払い、幸福を与えてください……」

彼女がその十字架に祈っていると、
背後から男性の声が聞こえてくる。

「なーに言ってるんだ、セカンド」

「うっきゃぁぁぁ!!??」

それに大げさに驚きながらも振り向くと、
そこにいたのは悪戯っぽく笑っているニニで
セカンドと呼ばれたアゲハントはちょっと怒る。

「いきなり声をかけないでください!!」

「はは、悪い悪い。にしても進化したな、お前……。
 最後に会ったのはカラサリスだったっていうのに
 今じゃこんなに美しいアゲハントだもんな。
 ところでサードは?」

「ここにいるよ、フォース」

ニニが質問した直後、別の部屋からコンビニの袋を持って出てくるドクケイル。
どうやら彼がサードらしいのだが
何故か彼はニニの事をフォースと呼んだ。
その言葉を聞いたニニは呆れた目で言う。

「いい加減それ止めろ。俺はもうその名前捨てたんだ」

「でもあなたがその名前を持って生きていた事は事実ですよ。
 少なくともここは神の御前、
 神の前では神の子がつけてくださったた名前で宜しいと思いますが」

「セカンド、
 フォースはもうフォースじゃないんだ。
 いい加減区切りつけたらどうだ?」

「ですが!」

セカンドがサードの言葉に不満を持つ中で、
ギギィと協会の扉が開きニニ2号が入ってくる。
それを見たニニは思わず声に出す。

「やべっ、2号の事忘れてた」

「もしかしてフォースの子?」

「違うわっ!」

サードの言葉に素早くツッコミを入れるニニ。
ふわふわとニニに近づくとニニ2号は、
ふと十字架を見上げて呟く。

「……アレに書かれている人は、誰ですか?」

「何でも大昔に存在した人間の女をモデルにした天使らしい。
 モデルとなった女はマザーって呼ばれていてな、
 それがどんな相手でも決して差別はせずに
 愛を与え続けた心が何よりも美しい人だったんだってよ」

「そうなのですか」

十字架に描かれた天使の女性を眺めながら納得しながらも、
自分は異端なるヌケニンだから記憶が無いのかと思ってしまう。
ダブルニニの会話を聞いていたサードがふと疑問に思ったのか質問してきた。

「まさかあのヌケニンって障害進化……?」

「あぁ。2号はれっきとした雌で、しかも俺がツチニンだった頃の記憶を持っていない。
 まっ、無理矢理進化したみたいなもんだから
 俺にもその名残が残っているからよ」

ほらと見せるのは右目に残っている痛々しい傷跡。
サードがうげぇと思い切り嫌そうな声を出す中で、
セカンドがニニ2号に近づいて質問する。

「あの、あなたは彼の分身みたいですけど
 さっきから何故その十字架を眺めているのですか?」

「あの十字架の素材をポケにすると
 色々な銃火器やナイフ、そして刀が買えるだろうと思いまして」

「なっ?!、何故そのような事を考えるんですか!?」

とんでもない答えにセカンドが驚きの声を上げると、
ニニ2号が不思議がりながらも極普通に答えた。

「野性ジャガムの狩りや敵からの襲撃、
 自己防衛などの目的で使用しております。
 置物なんかよりもずっと役に立つと思い計算していただけですので、
 何も問題は無いと思います」

「……フォースチルドレン!!」

ニニ2号の発言を聞いたセカンドが怒った様子で
フォースことニニの旧名を叫ぶ。
大急ぎで顔を背けるニニだったが時既に遅し。

「あなたは何をやっているのですかぁーーーー!!」

教会の外にもいきそうなくらいでかい怒鳴り声が教会内に響く。
さりげなくサードはニニ2号を連れて彼等から離れると
呆れたように呟いた。

「あっちゃー、セカンドったら説教モードに入っちゃったよ」

「何故ですか? 私は日常光景を思い出しながら言ったのですが……」

その言葉にさすがは『外』の住民と苦笑するサード。
ふとセカンドに物凄い勢いで説教されているニニを見て、
サードは彼を指差しながらニニ2号に尋ねる。

「ってかフォースの奴、今はどう名乗っているんだ?」

「フォース? ニニの事ですか?」

「そっ。というかニニってすっげー適当につけた感じの名前だな」

ニニという名前に呆れながら苦笑するサード。
その言葉にニニ2号も確かにと納得してしまう。

 

 

ズシャァアァ!!

明るい表街とは違う裏路地の中でも
最も人気が無くて血が飛び散っている場所に赤いモノはいた。
いや、正確に言うと血は今さっき飛び散ってしまったのだ。
下に落ちているジャガムであった肉の塊から。

「これでお前は苦しみから解放された」

赤いモノ……虫&鋼ジャガムのハッサムは、
冷たい目で見下すように肉の塊を見つめる。
その光景に対して何時の間にか壁の上から眺めていた者は言う。

「相変わらずね、任務成功した時のその口癖。
 ……口癖にしては長いけど」

その女の声に反応してハッサムは壁の方に目を向けずに問う。

「その声はメニーか?」

「正解」

問いに一言で答えると壁の上にいたメニーは、
スタッと地面に着地する。
そしてハッサムの方に近づきながら言う。

「にしてもレサハ、良く進化出来たわねぇ。
 珍しいアイテム使わないとストライクから進化出来ないのに。
 んで、どう? ハッサムの体は」

「……少し、鈍くなった。だが炎にさえ当たらなければ大丈夫だ」

弱点が減ってくれたのはありがたい。
レサハはそう付けたす中で、
ハッサムの強力さに驚きながらもメニーは腕を組みながら聞く。

「へー、って今覚えている技は何よ?
 決まり破って絶対四つ以上なのは分かるわよ」

第一そうじゃないとやっていけないしね。
メニーは心の中でそう呟きながら、
レサハの返事を待っていると
彼は目を閉じてクールに答えた。

“我等は闇に潜む者、決して敵に悟られるな”
 貴様とて師の言葉を忘れたわけではなかろう?
 それ故に貴様に教えることは無理だ」

「ジュエル師匠の言葉、まだ覚えてたのぉ!?
 相変わらずこういうとこは堅苦しい奴ね。
 ところでまだ群れていないの?
 あんたの実力なら普通にどっかの組織に入っても大丈夫だと思うけど」

メニーは驚きながらもレサハがフリーの殺し屋な事に疑問がる。
普通彼ぐらいの実力者ならば裏の組織に入ってても可笑しくなくて、
自分と違ってレサハはまともだから裏切られる心配も無い。
レサハは腰に右手を当てて答える。

「今のところはな」

「あらそう。んじゃ私も仕事あるからこの辺で……」

「ひ、人殺しぃ!!」

メニーが去ろうとしたら突然怯えたような人の声が聞こえた。
二人が声が聞こえた方を向くとそこにいたのは炎ジャガムのリザードで、
完璧に怯えていて腰が抜けてしまっている。
そのリザードを見てメニーがちょっと呆れたように呟く。

「あっちゃー、どっからいたのかしら」

「あの様子からしてついさっき来たばかりであろう。
 ……メニー、こいつをころ」

こいつを殺すのか?
レサハがそう尋ねようとしたら、メニーは素早くリザードの方に走っていく。

「ひ、ヒィ!!」

それに怯えるリザードに対して、メニーは不気味に微笑む。

「……こんにちは

ゴッ!!

「ガハッ……!」

挨拶すると同時にリザードの腹に冷凍パンチを繰り出すメニー。
そして手を離すと同時にリザードがどんどんと凍ってゆき、
メニーはリザードに背を向けると言う。

そして、さようなら

直後、ガラガラガラとリザードが入っていた氷は崩れていく。
効果はいまひとつ足りない分類に入ると言うのに、
メニーはそのリザードを瞬殺したのだ。

「相変わらず、容赦が無い女だ」

“邪魔者は全て狩れ”
 これもジュエル師匠の言葉よ。
 ……あなたはもう少し容赦を覚えなさいよ」

レサハの言葉にメニーはそう答えると、
ターゲットを殺す為にその場から去っていく。
その言葉を聞いたレサハは鼻で笑うと人を呼ぶ。

「ベディ、いるのだろ? 早く出て来い」

彼がベディという人物を呼ぶと同時に、
物凄い悪臭と共に紫色のヘドロが地面から少しずつ出てくる。
その毒ジャガム……ベトベトンは片手を地面に付けると言う。

「あの女が貴様の同僚だった女か……。
 リザード相手に一瞬で相手を殺すとは、
 相当な腕利きのようだなぁ」

どうやら地面の中からしっかりと眺めていたらしく、
メニーの殺しを見て強さを判断するベディらしきベトベトン。
レサハはその言葉を聞いて苦笑しながら言う。

「俺の兄弟弟子だからそれぐらい無いと困る。
 ところであの馬鹿……フルードは何処にいる?」

「街中見物に行ったようだ。
 ゴッズに命を狙われているのを忘れて、
 勝手に決められた許婚のソレイユ姫を探しに行くとは
 アレであの人の弟君だとは思えん」

「同意だな。別にあの馬鹿が死んでも俺はどうでもいい。
 だが社長にとってはそうはいかないからな。
 仕事は済んだから急いで探しに向かう。
 それでベディ、貴様はどうするつもりだ?」

レサハは馬鹿……じゃなかった、フルードを探しに行こうとしたが
ふとベディがどうするのか気になって問う。
ベディは溜息をつくと答える。

「ベトベトンは嫌われ者だ。
 クリスマスの命令が出たらすぐに出撃する」

「……そうか」

レサハはそれに頷くとそのまま裏路地から出て行きだす。
ベディも再び地面の中に潜り出して
匂いと共にその場にいた証拠をすっかりと消してくれた。

 

 

 

「黄金の太陽の国で起こるのは喜劇か、それとも悲劇か」

 

 

 

次回【束の間の平和】

 

 

 

後書き


作者「前回と同じく1000行突破ぁーーーー!!!!
レオ「突破せんでいい」
マヨ「この人は何でこんなに色々な場面書きたがるんや?」
メニー「暇人だからよ。学生の癖にね」
ウェン「相変わらずきっつい一言ッスねぇ」
ニニ「それにまだ二話だっていうのに身内キャラまで出すとは」
ニニ2号「絶対後先考えていませんね」
作者「そこまで攻めるなぁ!! くそっ、人数多い分太刀悪すぎ!!(泣」
メニー「さて、何か言う事は無いのかしら?」
作者「ありますあります! だからシャドーボールは止めて!!」
マヨ「怖っ! 相変わらず怖っ!!」
作者「それではジュエル先生もやりましたがこの世界について説明しましょう」


太古の昔、人間は神々の手によって滅ぼされました。
人間の代わりにポケモンが知識を得て、
ジャガムと名乗るようになり人間の文明遺産の知識を踏み台にして進化していきます。
ですが野生に勝てなかったジャガムも存在していて、
これ等に知識を与えるにはとても大変です。
だからここで知識を持ったジャガム達は思いついた。
『外』と『中』に別けてみてはどうだろうと。


マヨ「はいはーい、質問〜」
作者「はい、ヨマワルのマヨ君!」
マヨ「何で人間は滅んでしまったんや?
   それと全てのジャガムじゃないってどういうこっちゃ?」
作者「おぉ! 良い質問!!」
レオ「人間はミュウツー等の人工製造生命体を作り出したり、
   俺達ジャガムを捕まえて互いに戦わさせ合っていたんだ。
   しかもドーピングもさせていたからジャガムにとっては悪魔だったんだよ。
   だからジャガムに分類される神々はブチって切れたわけさ」
作者「俺のセリフ、取るな! 次の質問は答え……」
ニニ「んでもって全てのジャガムじゃない理由は簡単。
   人間っていうのは昔は猿に近い生命体だったんだ。
   だが猿から人間に一直線に進化したわけじゃない。
   ゴリラやチンパンジー等の分岐もあったが、進化したのは人間だったんだ。
   言ってしまえばイーブイ5進化みたいなもんさ。
   ジャガムもこれと同じで、知識の進化が出来なかったって事」
作者「お前も取るなぁーーー!!!!」
メニー「マヨ、何であんた知らなかったのよ?」
マヨ「いや、読者の皆様の代理人や!」
ウェン「え? 見てる人、いるんすか?」
メニー「冷凍パンチ」>ウェン
マヨ「うわっ、ウェンが凍った!!」
メニー「さて、次は誰にしようかしら……」
作者「つ、次の説明に参りま〜す!!(汗」


『外』と『中』に別ける案はすぐに採用された。
『中』=ドームの中の街、もしくは国の事で
上空が見えるように透明になっている。
相当な広さな為、狭いなんて誰も思わない中で
『外』に出る為のゲートを使用出来るのは特別任命された人だけ。
既に分かっているであろうが『外』というのは、
そのまんま自然や野生がそのままの『中』と言われるドームの外の事。
弱肉教則の世界の中で、『外』にも知識人は存在する。
知識人の場合何らかの理由で『中』に入られないモノが多く、
盗賊団もこの分類に入る。


マヨ「はいはい、質問〜!」
作者「はい、マヨ君!」
マヨ「ちょっと外と中が想像しにくいんやけど、例えを出すと何なんや?」
ニニ2号「例えに向いているのはゲームのポケットモンスターですね。
     『中』はマサラタウンやミシロタウンみたいなもので、
     『外』は○○番道路という場所を現しています。
     トレーナーは元々は『中』の住民だった現『外』住民の事を指しています」
メニー「まぁ、違う点は『中』と『外』の出入りが基本的に禁止されてるとこと
    『外』ではルール無用の殺し合いってところかしら」
筆者「また先に答えられたぁ……」
レオ「ついでに『中』同士行き来する場合は地下鉄を利用しているので問題無し」
筆者「シギリアの詳しい説明はしないよ。一応重要キーワードだし!」
ニニ「んじゃ、早く俺らの紹介してくれ」
メニー「前回紹介する宣言しちゃったもんね」
筆者「もしもしなかったら?」
メニー「“こんにちは、そして、さようなら”をしてあげる」
筆者「うげっ! しますしますします!!」


レオ
盗賊団のリーダーである体を古いマントで包んだニャース。
クールで冷静、人間の目では分からないがニャースの中では相当な美形らしい。
技よりも拳銃などを主に使用して戦っている。
謎のフロッピーをガーディアンズから盗み出しているらしいが目的は不明。
中で外出する時はマントを外して赤い帽子を被っている。
「悪いな。あんたの言葉を聞いてると時間が無駄に過ぎるだけだ」

メニー
盗賊団のサブリーダーで元殺し屋のニューラ。
男勝りで口より先に手が出るタイプ、見た目だけはクールビューティ。
己の素早さを生かした殺しを得意としており、苦手なタイプでも簡単に倒した。
師匠にルージュラのジュエル、兄弟弟子にハッサムのレサハが存在している。
何故盗賊団に入ったかは不明。
「こんにちは、そして、さようなら。こんなところで会わなかったら良かったのにね」

マヨ
盗賊団のムードメイカー兼弄られ役のヨマワル。
関西弁を使用するノリの良い性格だが何故か弄られやすい。
相手の行動を制限する技が得意で後方サポートタイプ。
レオ曰く「トラブルメイカー」でもあるらしく、よく何かやらかすらしい。
メニーの事を姐さんと呼んでいるが理由は不明。
「まっ、わいは盗人専門でして! 後で姐さん達に殺されてもわいに文句言わんでね?」

ウェン
盗賊団の一番最後に入ってきたキモリ。
頑張り屋でレオの事を尊敬しているのだが、内心ツッコミが一番激しい。
吸い取る系の技が得意なのだがレオが拳銃得意なので自分もそうしようと頑張っている。
車やバイク等の運転が一番得意で第一話でも車を運転していた。
「さすがレオさん! 早撃ち凄すぎッスよ!!」

ニニ
盗賊団唯一の医者である右目に傷跡があるテッカニン。
冷めている感じがするが仲間思いで良くメニーのせいで怪我するマヨを介護している。
特性が「加速」なのでメニー同様素早く攻撃するのが得意。
医者であると同時にゴッズ関係者だったらしく、
何故か「フォース・チルドレン」と呼ばれている。
「架空の天使の言葉、教えてやろうか? 全ての人に愛は存在するって言葉さ」

ニニ2号
盗賊団のニニの分身である看護婦帽子を被ったヌケニン。
無表情で段々とした喋り方が特徴的な大人しい雌。
防御が得意技で彼女が囮になっている隙に倒すと言う事が多い。
障害進化の被害者らしく女の精神を持っていてツチニンだった記憶を忘れている。
「私には、そのタイプの攻撃は聞きません」


作者「言っておくが他のキャラの説明は必要な時にする!!」
レオ「だろうなぁ……。にしても一気に新キャラ増えたな」
メニー「確かにそうね。二話だって言うのに多すぎない?」
マヨ「えーと、出てきた奴の名前を挙げていくと……」
ウェン「レクオさん、ジュエルさん、バルスにイリス……」
ニニ「キリアス、ポッチー、シルディア……」
舞台裏からの声「それで呼ばないでほしいっすぅぅぅぅぅ」
ニニ2号「何か舞台裏から声が聞こえたのですが」」
レオ「無視しろ」
マヨ「セカンドにサードやろ……」
メニー「ニャピィ、レサハ、ベディ。こんなとこかしら?」
作者「うわー、かなりいるねー」
盗賊団『出したのはお前だろうがぁぁぁ!!!!』
作者「えっ、ちょっ、みんな待って!!」

――――――――――暫くお待ちください――――――――――

緑「それでは次回【束の間の平和】をお待ちください!」
薫「出番少なかったな、俺ら……」
セレビィ「ビィ?」




長い・・・・・長いですが
のん気な盗賊団と残酷な殺し屋や対照的で面白かったです!
冷凍パンチの扱い方も違っている。
無関係ですけど、
団でレオが絡むと、ついつい『ポケモンコロシアム』の主人公を思い出します。